北東のジャケット写真

歌詞

蛙ノ鬼

Daichi Wago

東より正三角の月が出る

かつて経験したかもしれない方角から、

上がってくる 淡雪色の煙

駅から離れた場所にて約束した

懐かしい友人に会うんだ。今夜9時

この季節はどうも何もかもくすんで見える

近頃は誰かと並んで座っても

もはや何の現在もなく

活けられた新緑も

すぐに重たい石のテーブルに飲み込まれてしまう

それにしてもこの椅子は小さすぎないか

これでは

受け止めきれないだろう

この夕暮れの質量は

もう会うことがなくなった人々

夢の中 二匹の象の足の裏側

それらは決してめざめることはない。

それは 俺が願ったためなのか?

悪い夢を中断させようとして 何度も

ひきがえるたちのところへ通ったのだが

ダメだった。

「もうすでに右へ動き出しているものを

今更 左へ動いていたことにしようだなんて

ここは練馬区役所ではないし

ましてや 福島市役所でもないのです」

かつて 怒りに身を任せ、私が

汚い字で書き殴った比喩の数々は

いつの間にやら口寄せや召喚の体をなし

東西南北 あらゆる悪霊たちに

返せないぐらいの借りを作ってしまっていた。

特にこのひきがえるどもはきっちりしている。

ネクタイなんて 俺より綺麗に結んでいるし、

襟も袖口も 皺一つだってない。

東より正三角の月が出る

1番の友人だった

君はよく俺と遊んでくれた

君は俺に机の角の硬さを教えてくれた

君は俺に 俺の

社会における役割を教えてくれた。

君は俺の思い通りにならない人生を

予言してくれた。

君は俺にひきがえるという

名前と役割をくれた

思えばあの時俺は 何と愚かだったのだろうか。

君の友情にも気付かずに。

俺は何度か君を頭の中で

頭の中で何度か

それは友情ではないはずなのに。

友人よ、

今の君の不遇は全てひきがえるが差し向けたものである

今の君の苦しみは全てひきがえるが企画したものである

今の君の悲しみは全てひきがえるが執筆したものである

やがて彼がやってきた。

何か話した気がする、

仕事のこと、恋人のこと、趣味のこと

でも何も聞き取れなかった、

久しぶりにきく故郷の訛りのせいか、

うるさすぎる店内のせいか

それとも

2時間後

俺は一人でいた

あったのか なかったのか

もはや どうでもいいことだ。

実在しない感情が私の左手を握る。

  • 作詞者

    Daichi Wago

  • 作曲者

    Itsuki Kun

  • プロデューサー

    Itsuki Kun

  • レコーディングエンジニア

    junchai

  • ミキシングエンジニア

    junchai

  • マスタリングエンジニア

    KUROMAKU

  • グラフィックデザイン

    NAOHIRO YOSHIDA

  • ボーカル

    Daichi Wago

  • ライセンスされたビート

    Itsuki Kun

北東のジャケット写真

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Club Asiaで開催されている芸術と音楽の実験集会「魔界難入」の主催者としても活動するアーティスト・Daichi Wagoが、キャリア初となるフルアルバム「北東」をリリース。
プロデュースは横須賀を拠点に活動する3ピースロックバンド・Fallsheepsのメンバーであるjunchai、syu yoshida、Itsuki Kunらが手がけ、マスタリングはKUROMAKUが担当した。アートワークは同じく「魔界難入」の主催として活動する画家・Naohiro Yoshidaが製作。
本作品は、歌人・馬場あき子氏の著作である「鬼の研究」(筑摩書房)から大きな影響を受けて製作された。日本のさまざまな場所で精力的にLIVEを行うDaichi Wagoが、「高速で放浪する感覚」と、「どのジャンルや界隈にも所属することができない感覚」を12曲=12匹の鬼に託してアウトプット。シュルレアリスムを軸とした現代詩的なリリックをラップ、歌唱、演技などの形で使い分け、まだ見ぬオルタナティブな表現に挑戦した。ビートはポストロック・ブーンバップ・ハードテクノ・トリップホップ・アンビエント・バイレファンキ・民謡など多種多様なジャンルをカバー。さながら「聴く長編映画」のように、物語の進行に合わせて複雑な展開を見せている。
タイトルは、鬼の出入りする方角にちなんでつけられた。これは既存の文脈やジャンル分けでは定義の難しい、「まつろわぬ音楽」。重たい雲が立ち込める北東の方角から、旋律と鬼哭が聞こえてくる。

アーティスト情報

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