Flowers for Readymade Front Cover

Lyric

Reading - Declining

Nekogi Bunko

工場から暗闇の通路を通って寝床に戻ると、草臥れた身体で壁に寄り掛かって、二人で肩を寄せて座り込んだ。服には焦げた金属の匂いが染み付いていて、それが湿気の酸性の匂いと混ざって不快さを覚えた。吸い込んだ粉塵が僕とレイラに酷い咳をさせる。部屋の隅にあるバケツから水を掬って喉を潤した。燻された金属の流体が喉を流れる感覚がする。レイラはそれが気管に入ったようで、また酷く咽せ返した。

夏は日が長いようで、小高いところにある小さな格子の換気窓から赤色の夕日が差し込んでいる。今日初めて見る太陽だ。

「夕日」

レイラが換気窓をまじまじと見つめている。眼は赤色に染まる。暗闇の生活でただ一つ光る太陽はあまりに眩しく、見惚れてしまうのだ。僕らが唯一知っている世界の色だ。僕らを夕色に染めるただ一つの光だ。その光に、無性に希望を見出していたんだ。神様みたいだった。あの光が僕らをいつか外の世界へ連れ出してくれる、そう思い込んでいたんだ。でも光は軌道に乗って通り過ぎるだけで、僕らはずっと暗闇の中だった。いくら願っていても何も変わらない、そういう無力感で一杯だ。

幼い頃の僕らは「いつか世界を見に行こう」なんて言って目を輝かせていた。でもその目は今じゃ死んだような形相をしている。生活が日々命を蝕んでいる。このままじゃ僕らはここで息絶えてしまう。もう行かないと。あの日二人で思い描いた、遥か遠い幻想へ。

僕らに、レディメイドに花束を。

  • Lyricist

    Sou Nekogi

  • Composer

    Sou Nekogi

Flowers for Readymade Front Cover

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    Reading - Declining

    Nekogi Bunko

  • 2

    Inhuman

    Nekogi Bunko

  • 3

    Blue star

    Nekogi Bunko

  • 4

    Nice moon

    Nekogi Bunko

  • 5

    Reading - Dawn

    Nekogi Bunko

  • 6

    Walking alone

    Nekogi Bunko

Artist Profile

  • Nekogi Bunko

     京都の5人組ロックバンド。アルバムを一冊の文庫本と見做し、それを映画化するように音楽を奏でる。  脚本は主宰である猫木蒼により構築される。物語の断片がそれぞれの楽曲に宿され、その詩が彩花の透き通るボーカルで歌い上げられる。  第一作目となる「レディメイドに花束を」は、小説仕立ての朗読2編と特色ある4曲で構成されている。ダークでジャジーな「人紛い」疾走感満ちるロックチューン「ブルースター」スイングする煌びやかな「宵月」エピローグを飾る「神様がいなくても」。一貫していながらもジャンルを跨ぐ楽曲たちにより、何度でも聴けるストーリーアルバムとなっている。 Vocal 彩花/Guitar, Composer 猫木蒼/Piano 久郷晴香/Drumもちお/Bass, Sound Engineer ババキャン

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