Lyric

あの丘の向こう

玉葱畑のあとの　金色に輝く干し草の海に

古ぼけた飛行機が舞い降りるのを

今年も待っていた

翼がつくる影の中

腰を下ろした髭面の男が右手を上げて言う

待たせたね　約束通りにここへ来た

夏が終わる前に

プロペラが回りだせば

干し草を吹き飛ばして

舞い上がる飛行機は高度を上げて

干し草の海の自転車が小さくなる

地面に映る飛行機の小さな影を

追いかけるように風にとけてゆく

地平線の輪郭が逆さまに映る

くるりと宙返り

ものうげな夏の終わり

曲芸飛行士は

最後のお客を降ろした後

暮れがかる空に一番星見つけた

あの丘を越えて　国境を越えて

地球の裏側を一回りしたら

来年の夏　ここへ戻ってくる

金色に輝く干し草の海へ