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アルバム全体を貫くテーマである“内なる葛藤”の中において、本楽曲は静かな覚醒と気づきを象徴する位置を占めている。そのタイトルが示す通り、『時の音』は、音楽的にも感情的にも、「目覚め」の瞬間に焦点を当てた一曲である。

焦燥や諦念に支配された日々のなかで見失われがちな「始まりの気配」を、鋭敏な感覚で掬い上げるようにして生まれたのが、この楽曲である。圧倒的なノイズや衝動ではなく、内面の深部に訴えかけるような感覚がこの作品の核心を成している。

音像は激しく、重厚である。轟音のようなディストーションギターが空間を埋め尽くし、ドラムとベースが地を這うようなグルーヴを刻む。一方で、その激しさは決して外向きではなく、自己の内側へと沈潜するベクトルを持つ。まさに、シューゲイザー的文脈からの影響を色濃く感じさせる構成であり、リバーブとディレイに包まれたギターのレイヤーは、夢幻と現実の狭間を揺れ動くような浮遊感をもたらしている。

この曲では、ギターの深い残響と、柔らかく広がるシンセサウンドが交錯しながら、ノスタルジーと未来の予感を同時に描き出している。全体としてはきわめてラウドでダイナミックでありながら、音の一つひとつは繊細に配置されており、楽曲全体がひとつの「内省の風景」を構築している。アルバム全体の中でも異彩を放つ、“轟音と沈黙のあいだ”に宿る情熱を描いた一曲である。

The Last Personの音楽性は、Oasis、ASIAN KUNG-FU GENERATION、Nirvana、スピッツなど、国内外のロックレジェンドからの影響を基盤としている。本楽曲ではそうしたルーツに加え、My Bloody ValentineやSlowdiveといったシューゲイザーの先達に対するオマージュが、独自の形で昇華されている。

タイトルの英訳は「Awakening Song(覚醒の歌)」である。アートワークには12の言語で「覚醒」という単語が刻まれており、それぞれが異なる文化的背景を持つ人々に共鳴する普遍的なテーマを象徴している。誰もがいつか、自分自身と向き合い、目を覚ます瞬間がある。『時の音』は、そうした瞬間に寄り添うための楽曲である。

本作は、2025年5月14日にリリースされるフルアルバム『Record of Inner Conflict』の“最後の先行シングル”という位置付けを持つ。アルバム全体を通して描かれる、迷いや怒り、喪失、再生といった感情の軌跡――その物語の始まりを告げる、決意のような一曲である。

アーティスト情報

  • The Last Person

    日本を拠点に活動するソロアーティスト。 作詞・作曲・アレンジからミックス、マスタリング、アートワークまでを一人で手がける完全DIYスタイル。 デビュー作『Record of Inner Conflict』は、10年以上にわたる葛藤を綴った“内なる対話”の記録。 オルタナティブ/インディーロックを軸に、等身大の言葉とサウンドで心の奥を鳴らす。

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