Inushippo Weather Station Front Cover

Lyric

Inushippo Weather Station

Donut Sheep

いぬしっぽ気象台

ちりん

くるん

空が 向きを変える

わん

ぽつん

いぬしっぽ気象台

本日も 開局中

七浜市 朝六時

ミナモ商店の青い台車

まだ誰にも押されてないのに

風だけ先に 角を曲がる

白い犬が 屋根の上

前足そろえて 空を見る

しっぽを右に ひとふりで

駅前ロータリー 晴れになる

しっぽを左に 半分だけ

旧体育館の鍵が 湿る

首輪の鈴が ちりんと鳴れば

南の海から 雲が来る

雲の行き先を いま決める

犬の気分で 空が動く

天気図は あとから描く

レーダーは あとから光る

いちばん先に 揺れるのは

丸いしっぽの 先っぽです

いぬしっぽ気象台

明日の空を 決めている

くるんと回れば 虹になって

ふわっと眠れば 霧になる

君が願ったからじゃない

奇跡の名前でもないけれど

犬がそうした ただそれだけで

屋根の向こうが やさしくなる

いぬしっぽ気象台

世界の天気を 決めている

Tail swing 空が変わる

Rain ring 鈴が鳴る

わん わん Weather obeys

くもりの端っこ ほどけてく

Tail swing 朝が来る

Rain ring 町が光る

わん わん weather obeys

今日はたぶん 犬の空

午前十一時

犬があくびをしたので

北半球のうすい雲が

少しだけ 西へずれる

午後二時十五分

しっぽが床を 叩いたら

五階の非常灯が またたいて

遠い港に 風が立つ

どこかの傘が 開くこと

どこかの靴が 乾くこと

ぜんぶ覚えてないけれど

ぜんぶ少しは 決めている

気象衛星 まばたきしてる

百葉箱は 夢を見てる

犬は名前を 呼ばれないまま

台風の目を 丸くする

予報士さんの 赤いペン

追いつけなくて 転がった

でも怒らないで

空はもともと

犬のしっぽに 弱いから

いぬしっぽ気象台

明日の空を 決めている

耳をすませば 雪になって

鼻を鳴らせば 春になる

君の涙で 雨が降る

そういう話じゃないけれど

犬が見ている 町の上には

青いすきまが 残ってる

いぬしっぽ気象台

世界の天気を 決めている

海のむこうの 洗濯物

白いシャツから 朝が出る

トンネル抜けた 回送バス

窓に貼られた 古い月

パン工場の 裏門で

小麦粉みたいな 霧が立つ

犬はそれらを 知らないふりで

水を飲む

水を飲む

春を二センチ 前へ出す

夕立を少し 丸め直す

雷の角を やわらかくして

知らない町へ 走り出す

開局番号 わんのいち

午前六時

屋根 しっぽ 微風

午前七時

雲 左へ 犬の都合

午前八時

旧道 小雨

理由なし

午後一時

ひなた 追加

午後五時

まだ帰らない傘に

夕焼けを少し

午後九時

犬 眠い

いぬしっぽ気象台

明日の空を 決めている

くるんと回れば 虹になって

ふわっと眠れば 霧になる

君が願ったからじゃない

奇跡の名前でもないけれど

犬がそうした ただそれだけで

町の屋根まで あたたかい

いぬしっぽ気象台

世界の天気を 決めている

いぬしっぽ気象台

眠れば夜が ほどけてく

ちりん

くるん

今日の空も

犬が決めました

わん

ぽつん

おやすみ

晴れても

降っても

ふっても

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