

私は今、あてもなく、ゆっくりと歩いている
街はまばゆい光で溢れていた
けれど、光が鮮やかであればあるほど
自分が世界から消えていくような気がした
私の心はもう、どんなに美しい光を見ても
何も感じなくなっていた
きっかけは、あの大きな中学校への赴任だった
そこで出会った、ひとりの生徒
彼の目を見た瞬間、私の身体は凍りついた
その瞳には、光が全く宿っていなかったのだ
話しかけても、彼は決して心を開かない
この子は、心にあまりにも深い、深い傷を負っている
今、その手をつかんで闇から引き揚げなければ
彼は深淵に沈んでしまう
一度沈めば、もう取り返しのつかないことになる
もう時間がないと、私は焦るばかりだった
必死に駆け回った、けれど
周囲の教師たちから返ってきたのは冷淡な拒絶だけだった
「厄介事は持ち込まないでくれ」
パソコンのキーボードを叩く手を止めず
彼らは冷たく言い放ったのだ
その冷酷な言葉は鋭い刃となって
私の心を一刺しで切り裂いた
心が育つ大切な数年間
ここで学ぶ子どもたちには
生きる意味や、仲間を想う大切な気持ちだって
育てなければならないはずだ。だけど
この学校において、それは教育手引に印刷された
ただ読み飛ばされるだけの無機質な文字でしかなかった
今、あの子の心の火が消えようとしている
なのに、周りからは干渉を禁じられ
私は何もできない
どうしていいか、本当にわからないんだ
確実に光を失う未来が確定してしまう心を目の前にして
私は今、何ができるのだろう
何をするべきなのだろうか
笑顔の恋人たちや幸せそうな家族連れが行き交う
この街の喧騒(けんそう)の中で
私の心もまた、あの子の闇に引きずられるように
暗闇の奥へと深く沈み込んでいた
・・・
- 作詞者
m.ku
- 作曲者
m.ku
- プロデューサー
m.ku-3
- ギター
m.ku

m.ku の“方舟の行く先 座礁 第一章 不穏”を
音楽配信サービスで聴く
ストリーミング / ダウンロード
- ⚫︎
方舟の行く先 座礁 第一章 不穏
m.ku
ご好評頂いております。たかはし先生「卒業」の続編です。
田舎の小さな町の中学校が廃校になり、大きな町の中学校に転勤となった女教師「たかはし先生」を待ち受けていたのは、とてつもなく大きな問題でした。たかはし先生はその問題に立ち向かうことになります。
この物語は小説に例えたら一冊分相当です。曲に落とし込むにも「前」「中」「後」と三部作になってしまいました。それぞれに付いた「副題」が曲の中身を表しています。さてどんな物語なのか、お楽しみください。たかはし先生の物語はまだまだ続いてゆくのです。



