

祝福のなか
わたしは
わたしじゃないまま
この世界にうまれて
「強く」
「優しく」
「愛されますように」
その祈りのような願いという名前が
まだ息を知らないわたしを
この世界に 縫いとめた
名前が届くたび
ここにいてもいい気がして
何度も
うなずいた
意味なんて
知らなかった
でも
その音はやさしくて
ひとりじゃない気がした
ダリアの花が揺れていた
誰も気づかない場所で
名もなきわたしが 最初に見た
唯一の 色だった
名前って
最初に渡される
他人との境界線
その響きが
からだの奥に
影のように 残ってる
呼ばれ方が
ふえていくたび
名前は ちがう生きものになっていく
声の高さ
間のとりかた
音の速さや
まなざしの向き
それに合わせて
笑い方を変えていた
思考より先に
返事が出てしまうことを
ふしぎに思わなくなった
ずれていくのは
わたしのほうだった
呼ばれなければ
息のしかたさえ
忘れてしまいそうで
名前を受けとるたび
心臓が
小さく跳ねる
でも
泣いた夜の
あの震えは
まだ ここにある
わたしは
わたしを連れたまま
そこに いたかっただけ
名前が鳴る call my name
反射のように start the frame
選ぶ前から already done
気づけばもう chosen one
沈黙さえ repleyになる
考慮中でも skipped のまま
線は引かれて sign is set
引き返す場所も not allowed
意味じゃない not the truth
意志じゃない just a move
理解より先に go
Body says yes, mind says no
呼ばれなければ
透明になっていく気がして
でも
呼ばれるたびに
また
居場所が灯る
その音があれば
消えなくていい気がした
だから
ずっと 耳をすませていた
名前では
わたしを
説明できない
性格も
過去も
やわらかな狂気も
どこにも 記されていない
それでも
呼ばれると
世界の端が にじんで
わたしの位置が
輪郭をもつ
思い出の底に咲いたのは
白く滲んだ ダリアだった
だれかの声と一緒に
枯れてしまったはずの――あの色
体が先に
返事をしてしまう
そこに
気持ちは まだいないのに
ただの音
そう思っていたのに
名前が届いた瞬間
耳が先に 目をさまして
遅れて 息をする
わたしがようやく追いつく
誰かの声に触れたときだけ
ここにいる気がしてしまう
ほんとうは
最初から
わたしのなかにあったはずなのに
それでも今日も
あの音がすれば
また 振り返ってしまう
名前って
わたしを
ハイジャックするもの
Still thinking before I breathe
Still thinking before I breathe
- 作詞者
しゅか / Room no.38
- 作曲者
しゅか / Room no.38
- プロデューサー
しゅか / Room no.38
- ベースギター
しゅか / Room no.38
- ドラム
しゅか / Room no.38
- キーボード
しゅか / Room no.38
- シンセサイザー
しゅか / Room no.38
- ピアノ
しゅか / Room no.38

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わたしをハイジャックするもの
しゅか / Room no.38



