うつろいはまのジャケット写真

歌詞

うつろいはま

Lupus

うつろいはま

小さな町の隅っこの

小さな森の向こうには

〝うつろいはま〟と呼ばれる 小さな砂浜があった

この小さな白い浜辺には

毎日いろいろなものが流れ着く

ひしゃげた流木や

ひび割れた貝殻

把手の取れたやかん

穴だらけのボート

そしてたまに

壊れて動かなくなった旅人など

途方に暮れたさまざまなものたちが

ひっそりと砂の上に打ち上げられて

眠そうな海の波に洗われているのだった

うつろいはまを眺めていると

寂しい気持ちになるといって

町の人々は滅多に寄り付かなかったが

ときおり男がやって来て

流れ着いたよくわからないものを拾っては

大切そうに抱えて帰っていった

男は持ち帰ったガラクタを

直したり 新しいものにつくりかえたりしながら

ひとり静かに暮らしているのだった

ある夕暮れのこと

いつものようにうつろいはまにやって来た男は

そこでボロボロに擦り切れた旅人を見つけた

壊れてしまったのか

旅人は 動くことも喋ることもできず

揺すると 胸のあたりがカラカラと変な音を立てた

男は旅人を背負うと

ゆっくりとした足取りで

もときた道を戻っていった

ようやく家に帰り着いた頃には

日はすっかり暮れていた

男は ひとつしかない椅子に旅人を座らせると

しばらく黙ったまま

ボロボロの身体を見つめていた

背中に傷があるのは きっと誰かを庇ったからだ

頬がひび割れているのは たくさん一人で泣いたせいだね

擦り切れた靴は取り替えよう

息を吸うには吐き出さなくちゃ

大丈夫 旅人よ

もう一度 歩き出せるよ その足で

割れた胸の欠片を寄せ集め

そっと嵌める 種を埋めるように

つつみこむ てのひらで あたためる

心臓よ

もう一度 動き出しておくれ

錆びた心 忘れられた名前

乾いたくちびるが 探してる言葉は何?

君が捨てたメロディーを拾ってきてあげる

もう一度 思い出してよ そのうたを

削ったり 剥がしたり 伸ばしたり 付け足して

綻びを繕って 入れ替えて 補強して

確かめるように

壊す 造る 壊す 創る

人の手で織り上げたぬくもりよ

哀しくも懐かしい営みよ

撫でる 紡ぐ 掬う 願う

歌う 笑う 叫ぶ 祈る

削ったり 剥がしたり 入れ替えて 補強して

皮膚がまた新しく生まれ変わるように

傷ついたものたちよ

失われた時間よ

心臓よ 動き出しておくれ

錆びた心 忘れられた名前

乾いたくちびるが 探している言葉

そのうたを 思い出しておくれ

割れた胸の欠片を寄せ集め

そっと嵌めた 種を埋めるように

旅人よ 歩き出してよ

もう一度

それから

しばらく後のこと

小さな町の隅っこを

歩き去っていく旅人を見た者があるという

うつろいはまには

今日もいろいろなものが流れ着く

ときおり男がやってきて

生まれ変わるものたちが

うつろうさまを見つめている

  • 作詞

    饗庭純

  • 作曲

    饗庭純, クロダセイイチ

うつろいはまのジャケット写真

Lupus の“うつろいはま”を

音楽配信サービスで聴く

ストリーミング / ダウンロード

  • ⚫︎

    うつろいはま

    Lupus

Lupus(ルプス)

失われぬ気高き個性は、遠く離れていても遠吠えで呼び合う狼のように、共鳴し、音を織りなす。

多様なプロジェクト、様々なシーンで活躍する、独特な個性を秘めたアーティストが、一切の躊躇なく自身を解放できる場であるようにという願いを込め、饗庭純とクロダセイイチを中心にLupusu(ルプス)は結成された。

ラテン語で「狼」という名が表すように、幅広い縄張りで活躍しつつも、互いの出す音に惹かれあって集まった様は、
まるで遠吠えを聞いて集まった一匹狼の群れのようであり、そんな彼らが共鳴するアンビエントで幻想的な「静」とオルタナティブな心象を織り交ぜた「動」を感じさせるトラックは、透明感のある歌声と特徴的なコーラスワークに彩られ、独自の風景を浮かび上がらせる。


“うつろいはまに寄せて”

この物語は、身近な誰かのものであり、見知らぬあなたのものであり、そして私自身のものだ。
私たちは今日も生きている。
まるでもう元通りになったようなフリをして。
でも本当にそうだろうか。
ボロボロに擦り切れたものは、一度壊れてしまったものたちは、本当に元通りになるんだろうか。
私にはそうは思えない。
私たちが今日も生きているのは、何かを越えて来たからだ。
傷つき、壊れながら、時に立ち止まり、膝をつき、倒れ伏し、それでも立ち上がって来たからだ。
壊れたものは決して完全に元通りになんかならない。
誰かの力を借りて、自分も誰かに手を貸して、何とかここまで来たんだ。
それを元通りだなんて簡単に片付けるのは嫌だ。
苦しんできた。
闘ってきた。
だから今、ここにいる。
そのことを忘れたくない。
削ったり、剥がしたり、入れ替えて、補強して、皮膚がまた新しく生まれ変わるように。
傷ついたものたちが、失われた時間が、もう一度歩き出せるようになるまでの物語を、今届けたかったのです。

どうか心に届きますように。

過去ランキング

うつろいはま

iTunes Store • オルタナティブ トップソング • 日本 • 39位 • 2023年6月8日

アーティスト情報

  • Lupus

    Lupus(ルプス) 失われぬ気高き個性は、遠く離れていても遠吠えで呼び合う狼のように、共鳴し、音を織りなす。 多様なプロジェクト、様々なシーンで活躍する、独特な個性を秘めたアーティストが、一切の躊躇なく自身を解放できる場であるようにという願いを込め、饗庭純とクロダセイイチを中心にLupusu(ルプス)は結成された。 ラテン語で「狼」という名が表すように、幅広い縄張りで活躍しつつも、互いの出す音に惹かれあって集まった様は、 まるで遠吠えを聞いて集まった一匹狼の群れのようであり、そんな彼らが共鳴するアンビエントで幻想的な「静」とオルタナティブな心象を織り交ぜた「動」を感じさせるトラックは、透明感のある歌声と特徴的なコーラスワークに彩られ、独自の風景を浮かび上がらせる。 “うつろいはまに寄せて” この物語は、身近な誰かのものであり、見知らぬあなたのものであり、そして私自身のものだ。 私たちは今日も生きている。 まるでもう元通りになったようなフリをして。 でも本当にそうだろうか。 ボロボロに擦り切れたものは、一度壊れてしまったものたちは、本当に元通りになるんだろうか。 私にはそうは思えない。 私たちが今日も生きているのは、何かを越えて来たからだ。 傷つき、壊れながら、時に立ち止まり、膝をつき、倒れ伏し、それでも立ち上がって来たからだ。 壊れたものは決して完全に元通りになんかならない。 誰かの力を借りて、自分も誰かに手を貸して、何とかここまで来たんだ。 それを元通りだなんて簡単に片付けるのは嫌だ。 苦しんできた。 闘ってきた。 だから今、ここにいる。 そのことを忘れたくない。 削ったり、剥がしたり、入れ替えて、補強して、皮膚がまた新しく生まれ変わるように。 傷ついたものたちが、失われた時間が、もう一度歩き出せるようになるまでの物語を、今届けたかったのです。 どうか心に届きますように。

    アーティストページへ

Human Experiment Records

"