Lyric

コーヒーを啜り、時計の針を直す

おかげで数分早くこれたが

数時間後に控えた忘年会も

正直ストレスでそんな余裕はない

左腕で黙ってるエンポリオアルマーニの腕時計

3年の付き合いになるこいつは俺の決意の象徴だ

こんなクソな人生絶対変えるってな

あの日

まだ千葉県にいたあの日

夜中に睨みつけてたスカイツリー

仲間は去り、女は寝取られ

病み切った末、俺地元から消える

「きっと俺の居場所はここではない」

とかいって東京来て再起？

エントリーと待つ先

理想とは縁遠いよ遥かに

腕に新品のエンポリオアルマーニ

新しい職場は陽キャばっかり

ぶっちゃけ無理でも穏やかに

いかにも「調べてきました！」

みたいなオフィスカジュアルに身を包み

身を崩し、ひと紡ぎ

出稿用の文言と強く生きる意地

思い出にしばしの別れを告げると

マイク置き、クソ飛んだラストシット

「嘘でしょ？会社ですよね？」って洗礼

現世　過去の生きがいはイジりのタネで

歩合制　稼げず喘いでりゃ

逆枕　泣きっ面にブス　抱かされた

「ラップとったら何も残らない」

成績が数字の刃物をかざす

ドロついた人間関係が追い打ちかけ

気が付きゃストレスで難聴持ちだぜ

毎朝Bunks Marmaladeワンリピ再生

「余裕だぜ」って言い聞かせ

好きだったクルーの解散を知って、

あの頃には戻れないんだと悟った

「死ぬのが怖いから」

以外の生きてる理由があるはずだった

忘れられた過去の俺が言った

「こんな所でくたばってたまるか」

思い出す

2022.12.28 恵比寿

ウェスティンホテル

忘年会前の便所

腕上げると

そこには針止まった

エンポリオアルマーニの腕時計

「この地獄のような時間もようやく止まる」と

そう告げられた気がしたんだ

クソを水で流して外へ出た