

朝、出勤前に何気なくスマホを開いた。
元カレの投稿が流れてくる。
「人を信じるって難しいですね」
みたいな文章と、少し寂しそうな横顔の写真。
二股かけてたのはそっちやん。
思わず鼻で笑った。
「けったくそ悪いわ」
独り言が漏れた。
そのまま駅へ向かい、ホームで電車を待つ。
やっと来た電車に乗ろうとした瞬間、後ろから来たおばさんが当然のように割り込んで先に乗った。
別に急いでない。
でも腹が立つ。
「けったくそ悪いなあ」
小さく呟く。
会社に着いてからも運が悪かった。
先週から必死で進めていた企画の打ち合わせ。
上司が取引先に向かって言った。
「このアイデアは田中くんが考えてくれまして」
いや。
それ私や。
会議室の窓の外を見ながら、心の中でだけ叫ぶ。
けったくそ悪い。
昼休み。
同期の女子とランチ。
最近付き合い始めた彼氏の話、高級ホテルの話、ブランドバッグの話。
話題の九割が自慢だった。
帰り道、同期がトイレに立った隙にスマホを見る。
「今の話、全部聞かなあかんかったん?」
友達へのLINEを打ちかけて消した。
なんかもう。
けったくそ悪い。
仕事が終わる頃には少し疲れていた。
電車に乗り込み、吊り革を握る。
ふとスマホを見ると、好きだった人からの返信はない。
なのにインスタのストーリーは更新されている。
海。
カフェ。
夕焼け。
楽しそうな顔。
既読すら付いていないトーク画面と並べて見る。
「返信ぐらいできるやろ」
小さくため息をつく。
けったくそ悪いな。
夜。
コンビニでビールを一本買った。
家に帰ってソファに座る。
テレビでは芸能人の炎上ニュース。
誰かが失敗するたびに大騒ぎして、みんなで叩いて、広告収入を稼ぐ。
コメント欄には知らない誰かの悪意が並んでいる。
「ほんま、けったくそ悪い世の中やな」
そう言ってテレビを消した。
静かになった部屋でビールを飲む。
今日一日だけで何回この言葉を使っただろう。
元カレ。
割り込み。
上司。
同期。
返信のない男。
テレビの向こう側。
全部まとめて腹が立つ。
でも。
ビールを半分飲んだ頃には少しだけ気持ちが落ち着いていた。
たぶん本当に腹が立っているのは、そういう人たちじゃない。
嫌なことを嫌だと言えずに、愛想笑いばかりしていた自分自身なのかもしれない。
空になった缶を見ながら、彼女は最後にひとり呟く。
「まぁええか」
今日はもう終わりだ。
けったくそ悪いことは、明日の自分に任せることにした。
- 作詞者
MASAQUI
- 作曲者
MASAQUI
- プロデューサー
MASAQUI
- プログラミング
MASAQUI

MASAQUI の“けったくそわるい”を
音楽配信サービスで聴く
ストリーミング / ダウンロード
- ⚫︎
けったくそわるい
MASAQUI
けったくそわるいは、誰も悪くないのに何故か腹が立つ一日を記録した楽曲です。
元恋人の投稿。電車の割り込み。職場でのすれ違い。返信のないメッセージ。日常の小さな出来事が積み重なり、主人公の中で静かな苛立ちになっていきます。
怒りの歌に見えて、本当は自分自身を見つめる歌です。関西弁の一言に現代の生活感と本音を閉じ込めた観測記録です。



