

六月の終わりの風は、
まだ少しだけ春を引きずっている。
駅前のコンビニで買ったアイスが、
歩き出してすぐ溶け始めた。
制服のまま自転車を押しながら、
どうでもいい話をしていた帰り道。
川沿いを抜ける湿った夜風が、
季節の変わり目だけを知らせてくる。
何かが始まりそうな気がして、
でもまだ、変わってほしくなかった。
まだ夏にならないで。
半袖に変わっていく街の中で、
今のままの距離でいたいなんて、
言えないまま歩いていた。
夕焼けが少し長くなって、
君の横顔ばかり見てしまう。
始まればきっと戻れなくなる。
だからもう少し、このままで。
体育館から聞こえる最後のホイッスル、
コンビニ前に並ぶ自転車、
冷えた缶ジュースを交換しながら、
夜になるまで話していた。
「夏休み、どこか行きたいね」って、
冗談みたいに笑っていたけど、
たぶん怖かったのは夏じゃなく、
何かが変わってしまうことだった。
終わってほしくないんじゃなくて、
始まってほしくなかった。
まだ夏にならないで。
夜風が少しぬるくなるたびに、
今しかない時間だと気づいて、
急に黙ってしまった。
川沿いを走る電車の音が、
遠くで静かに揺れている。
何も始まってないはずなのに、
胸だけが先に苦しくなる。
夏が来れば変われると思ってた。
でも、本当に好きだったのは、
始まる前の
この空気だった。
まだ夏にならないで。
君と並んで歩く帰り道も、
少し湿った夜の匂いも、
このままずっと消えないで。
まだ夏にならないで。
戻れなくなる前の今だけは、
何にも名前をつけないままで、
もう少しだけ続いてほしい。
遠くで今年初めての花火が、
小さく夜空に響いていた。
- 作詞者
YxY
- 作曲者
YxY
- プロデューサー
YxY
- ボーカル
YxY

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