Lyric

戻れぬ任務と知っていた

それでも志願した理由は

明日が かかっていたから

「帰れないかもしれない」

そんな未来さえ 誇りに思えた

隊列を組んで 何度も繰り返した

同じ道 同じ声 同じ風景

「まだまだ」だって笑う教官の

顔はなぜか優しかった

「帰れなくても、恨むな」と

書き置いたあの人の文字をなぞる

まだ夢中で生きていたい

でも、誰かがやらねばならない

背を並べて寝転んだ あの日

「戻ったら、食事でも行こうぜ」

その言葉に 笑いながらも

目はどこか 遠くを見ていた

少しシワになった 写真の笑顔

弟の声、母の料理、父の背中

あの日の温もりが 今も手に残っている

思い出が僕の心を支えていた

名前を呼ばれた その瞬間

胸の奥で 何かが弾けた

恐怖と高揚が せめぎ合いながら

この身に託された運命を受け入れた

背中を押したのは覚悟か

帰らぬ運命と知りながら

心は静かに燃えていた

遠ざかる陸地と広がる雲

窓に映る自分の顔

死を受け入れた眼差しで

前を見つめていた

母上へ…

至らぬ僕を育ててくれてありがとう

背中を押してくれたその手の温もりが

最後の一歩を支えてくれた

愛する人へ…

僕の隣で笑ってくれた あの笑顔

もう一度見たかった…

君の幸せを心から願う…

叫ぶでもなく 泣くでもなく

静かに 心が決まった

この命が誰かの明日になるなら

それだけで十分だった

こぼれる涙を抑えながら

最後の命 尽きるまで

家族のため 仲間のため 未来のため

喜んで 行って参ります

本当は もっと生きていたかった

生きて未来を語りたかった

でも誰かの笑顔を守れるなら

この選択に悔いはない

「ありがとう」を叫びたかった

「ごめんなさい」もちゃんと伝えたかった

でも最後に思ったことは

「産んでくれてありがとう」

白い封筒に、手紙がひとつ

ただ一行だけ「ありがとう」