

賑わう駅のロビーで
ひとり 私は待っていた
鞄の中には 軽食のパン
ベンチの隅に腰かけて 小さく深呼吸
周りの誰も 目に入らない
知らない男が 隣に座った
何も言わず こちらを見て
私のパンを 一切れ取って 食べはじめた
「何この人? 失礼すぎる」
心の中で 何度も呟いた
「私のを 勝手に食べるなんて!」
だけど 言葉には ならなかった
なぜか もう 一切れを 私も口に運んだ
男はにっこり笑って 最後の一かけを半分に分ける
「どうぞ」って言葉もなしに 差し出してくる
私はむっとしながら その半分を取った
何かが 変だった
新幹線の発車アナウンス 私は席を立つ
感謝もせずに 男を残して
指定席に座って 鞄を開けたとき
そこにあった 未開封のパンの袋
盗人は 私だった
気づかなかった その人のやさしさに
疑っていたのは 私のほうだった
本当に失礼だったのは 私だった
何も言わず パンをくれた あの人の笑顔を思い出す
今度誰かと 何かを分け合える日が来たら
疑わずに 心から ありがとうを伝えたい
そうやって 世界を 少しでも やさしくできたら
彼女は 黙って受け取った
礼もなく去ったけど どこか懐かしい眼差しだった
本当は 誰かと分けたかった このパンを
見返りなんて いらなかったんだ
誰かの 真心を 疑わずにいられたなら
世界は もっと やさしかったかもしれない
これからは 私が やさしさを 渡していこう
後になって 母が私に話してくれた
「あの時パンをくれた人 実はね——
あれが あなたのお父さんだったの」
一つのパンから 生まれた小さな奇跡
誤解を越えて 私たちは 分かり合える
本当の出会いは きっと
何気ない瞬間の やさしさから 始まるんだ
- 作詞者
Justin Otani
- 作曲者
Justin Otani
- プロデューサー
Justin Otani
- キーボード
Justin Otani
- ピアノ
Justin Otani

Justin Otani の“本当の盗人”を
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ストリーミング / ダウンロード
- 1
雲の向こうへ
Justin Otani
- 2
あなたがいたはずの場所へ
Justin Otani
- 3
焔を継ぐ者
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- 4
灰の約束
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- ⚫︎
本当の盗人
Justin Otani
J-pop、アニメ、JRPGにインスパイアされた、ノスタルジーと物語性を織り交ぜたシネマティックで感情豊かなメロディを創っています。まるで異世界へ旅するような音楽体験を提供します
アーティスト情報
Justin Otani
東京を拠点に活動する音楽家。J-pop、アニメ、JRPGにインスパイアされた、ノスタルジーと物語性を織り交ぜたシネマティックで感情豊かなメロディを創っています。まるで異世界へ旅するような音楽体験を提供します
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