Lyric

なのにふっと手を離したことも

最後に泣いちゃったことも

「ごめんね」って言葉で埋めた嘘も

忘れることはないから

小刻みに震えるその身体を厚手の毛布で包めば

温めるつもりのこの右手のやり場に迷い戸惑う

俯いて拗ねちゃった花

寂しげな花瓶にもたれている

目が滲むことも、掠れるその呼吸も

気付かないフリをして

夏の空、散らかった青

飛行機雲が刺さっていく

心なく進む秒針の音が邪魔していることも

解けた紐、爪傷の跡

六畳間にふわり光景が咲く

この何もかもを覚えていれるように

他人事の声に視線を向けて

のろのろと歩み進める

右足、左足、ただ交互に

できるだけ急ぎ目に

すやすやと寝息立てる

一撫でして不意に視線落とす

あのドアの向こう、呼ぶ声、その理由も

気付かないフリをして

夏の空、透明な糸

喉を震わす声は甘く

荒らかに漏れる呼吸の音が邪魔してることも

僅かだけ残った灯を

嘘吐きの息で吹き消していく

柔らかな手に触れて涙溢した

夏の朝、始まった日の

六畳間の隅で震えていたこと

わがままで騒いだ夜も、駆け足な心臓の音も

気まぐれに甘えた声も

ビー玉のように透き通った目も…

その何もかもを覚えていれるように

ただいつまでも覚えていれるように