

霧の奥 うごく影
まだ名も知らぬはずだった
だが本能が 叫んでいた
「あれに近づくな」と
鬨(とき)の声すら 掻き消され
ただ一つ 異様な気配
人の列を 裂いて進む
あれはぐんか それとも災いか
槍が走る いや 違う
“来た”と思った時には もう倒れている
間合いも理(ことわり)も 通じない
戦の常が 壊されていく
誰かが言った 震える声で
「あれが――しま さこんだ」と
嘘だろう あれが人か
血を浴びて なお速くなる
斬れば止まる そんな理屈
あいつには 一つも無い
撃て 囲め 押し潰せ
命令だけが 虚しく飛ぶ
数で勝るはずの陣が
一人に 喰われていく
「退くな!」と将は叫ぶが
足はすでに 命を選ぶ
だが背を向けた瞬間に
背中ごと 刈り取られる
鬼だ
あれは鬼だ
名を持つさいやくだ
前線が 音を立てて崩れる
士気が 血の匂いで腐っていく
あの男が 立つだけで
ここはもう 戦場じゃない
処刑場だ
槍が折れ 刃が欠けても
あの腕は 止まらない
膝をつけ 囲んでもなお
最後の一歩を 踏み込んでくる
なぜ倒れない
なぜ笑っている
なぜこちらを 見ている
目が合った
それだけで 喉が凍る
逃げろ
誰かが そう呟いた
命令ではなく 本能で
それでも 包囲は狭まる
無数の刃が あいつに集う
ようやく ようやく倒れるはずの
その瞬間でさえ――
前に出た
最後まで 前に
血の海に 沈みながら
なお一人 道を開けていく
その背が 焼き付いて離れない
勝ったのか? 本当に
あれを止めて 勝ったのか?
霧が晴れても 耳に残る
あの踏み込みの音だけが
あれがいた場所には
ただの死体以上の何かがある
名を呼ぶことすら はばかられる
だが忘れられぬ
せきがはらの戦いの地で
我らは確かに見た
人の形をした
“敗北そのもの”を
- Lyricist
chubby face
- Composer
chubby face
- Producer
chubby face
- Programming
chubby face

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The Demon Devours the Front Lines - Shima Sakon
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