Lyric

十二度目の夏休みが始まる

通知表を投げ捨てて走り出す

息弾ませ揺れているポニーテール

強い日差し 水面色めかす

革靴脱ぎ捨て川岸に

ほどいた髪が風になびく

ドキドキ 胸が高まるのは

真夏の暑さのせいにして

見上げる向日葵 丸める木漏れ日 涼めるせせらぎ

跳ねる川の石 触れ合う指先 紅く染まる耳

茹だる昼下がり うなる室外機 錆びついたベンチ

なびく氷の文字 結露したラムネ 鳴らすビー玉の音

はにかんだ笑顔 覗かせる八重歯 吹きすさんだ風

この夏よ 続け

言えない 言えない 言えないよ

二文字だけなのに

行けない 行けない 行けないよ

もう少しこのままで

十五度目の夏祭りが始まる

浴衣 下駄の鼻緒が 華やがす

胸弾ませ ひしめき合う人波

離れそうになった手を掴む

打ちあがる花火 色づく綿菓子 並ぶ河川敷

ふと気づく渇き 溶けるかき氷 差し出すひと口

染みわたる甘み 頭刺す痛み 眺める微笑み

漂った香り 緩めた手のひら 強まる感覚

縮まってゆく距離 ぶつけ合う視線 重なる唇

この夏よ 止まれ

言いたい 言いたい 言いたいよ

二文字だけだから

行かない 行かない 行かないよ

もう少しこのままで

聞きたい 聞きたい 聞きたいよ

ありきたりな言葉

知りたい 知りたい 知りたいよ

潤んだ 瞳が 答えなのかな

言いたい 言いたい 言いたいよ

二文字だけだから

行かない 行かない 行かないよ

もう少しこのままで

消えない 消えない 消えないよ

手に残るぬくもり

消せない 消せない 消せないよ

二人の夏の日々