Geometry of Sakura and Iron Grille Front Cover

Lyric

The Cherry Blossom That Stopped the Second Hand

SoundWander_OtoLog

美しいものはいつも 終わる寸前が一番眩しい 君の睫毛(まつげ)に溜まった 雫が落ちるまでの数秒 世界は呼吸を止めて 僕らを標本にしようとする 「さよなら」の形をした 花弁が風に舞って 川面(かわも)を埋め尽くす 死骸のように白く 春の残酷さを 静かに説いている

記憶はいつか 酸化して色褪せるから この痛みだけは 鮮度のまま保存したい フィルムの切れた 映写機みたいに 僕らの季節が 唐突に終わるとしても

降り注げ 音のない嵐のように 薄紅(うすべに)の雪が 君を隠してしまう前に 僕がここにいたこと 君が笑っていたこと そのすべてを 五線譜(ごせんふ)に焼き付けて 神様、どうか 秒針を止めてくれ この悲劇が 喜劇に変わるくらいなら 永遠にこのままで

来年の春もまた ここに来ようなんて 果たされない約束は 呪いに似ているね アスファルトの隙間で 踏まれていく花びら 誰にも気づかれずに 土に還る運命(さだめ) 僕らの愛もきっと そんなふうに忘れ去られて 新しいビル風が 通り過ぎていくだけ

言葉にすれば 陳腐な感傷(センチメンタル) それでも喉の奥 棘(とげ)のように閊(つか)えてる 「行かないで」なんて 言えるはずもない 君の決意が あまりにも綺麗だから

咲き誇れ 散り際(ぎわ)の潔(いさぎよ)さで 後悔さえも ドレスに変えて踊ればいい 涙は拭わないで それが最後の装飾 未完成のままで 物語は閉じていく 愛していたよ 聞こえないくらいの声で 喧騒(けんそう)の向こう側へ 放り投げた

散るからこそ美しいと 誰かが言った そんな慰めはいらない 枯れない造花(プラスチック)でいい ずっと ずっと 側にいたかった

降り注げ 世界を埋めるように 薄紅の雪が 僕らを分かつ境界線 忘れないで この春の匂いを 心臓の奥底に 深く刻み込んで さよなら、愛しい人 秒針が動き出す 舞い散る花吹雪が 幕を下ろしていく

風が止む 花が散る 誰もいなくなる

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