歌詞

虫の声が聞こえる子は

たいがい夕方には目を逸す

光の裏側が絵の具みたいに

流れてくるからだってさ

団地に咲く花は野良猫より強く

女の裸を貼った白い紙

「みんな猿になる」って笑ってた

目撃されたのは 最後の非常階段

割れた虫眼鏡と 潰れた蚕

声は逆さま　石を噛んだ

近所の犬が電信柱から見てる

誰もリードを握っていない

でもあの目は「調べてる」目だ

校庭で蜻蛉を見た子は3人

夕方まで残ってたのは2人

1人だけ 名前が名簿から消えた

皮膚の下にインクが

操るなら今しか

そんな事出来るのか

ガタン、もう戻れず

押入れの奥でミミが喋ってた

「ミミの中に棲んでるの」

緑の糸を耳から引っぱる

筆箱の中にあったのは

3つの口　3本の脚

ねえ、としか言えない

進んで下がって　また戻る

給水塔の裏に落ちた

彼女と同じ髪型の虫が

3匹、同じ方向を見ていた

逆さまの声は いま、正しい

黒いランドセルの影が笑う

目のない顔で　じっと　立つ

回覧板は

何も書いてなかった

誰も気にしなかったんだ

でも知ってたんだ

「同じ子です」って

声のトーンだけ違った

虫の声が聞こえる子は

扉を開けるたびに

また鳴いてるだけなんだって

ガリガリ、確かに

ガリガリ、不確かだ

ガリガリ、確かに

ガリガリ、

飛びたいの　落ちてるの

爪でコンクリートをひっかいて

羽がもげてもまだ飛ぼうとしてる

空にいる間は飛んでるでしょ

飛んでる

泳いでる

見えてる

飛んでる

飛んでる

泣いてる

消えてる

飛んでる

ミミの中、また

喋ってる