千年後の僕らものジャケット写真

歌詞

海辺の施設

ユキニフル

呼吸は少しずつ荒く、でも、だんだん弱くなっていく。

見つけた食料はとっくに尽きていた。

もう着いてもいいころなのに、と何度思っただろうか。

脚を止めてしまえば、二度と歩き出せなくなる気がする。

その予感だけで、わたしはただ歩き続けた。

海沿いの、大きな橋の上。

風が吹く音、水面が揺れる音。わたしの靴が橋を踏む音。

人の気配が全くない海は、穏やかで、とても美しく、少しだけ寂しかった。

遠く、カモメの鳴き声が聞こえた。

橋を渡り切るころに、異変に気がついた。

倒れ込む人の影。

いや、これはキリグモの死体だ。外傷が激しい。

風に飛ばされそうなその死体は、わたしの目の前にある、大きな建物の方に向いて倒れていた。

巨大な棺桶。わたしが受けたのはそんな印象だった。

見上げるわたしの瞳を、すべて埋め尽くすような大きな建物。

わたしの目的地で間違いなかった。

ずっと昔。ここには無数の物語が集まっていた。

あらゆる人々が集まり、自らつくった物語を渡す人、それを探す人たちで、建物の中が埋め尽くされていたらしい。

この世界で、大きな戦争が起きたあの日も。

だからこそ、ここになら物語が残っているんじゃないかと、捜索隊は期待を寄せていた。

隊のほとんどが目的地に辿り着く前に命を落とした。

危険だからと同行を許されなかった、ノラエとわたしだけが残された。

  • 作詞

    宏川 露之

  • 作曲

    ein himinn

千年後の僕らものジャケット写真

ユキニフル の“海辺の施設”を

音楽配信サービスで聴く

ストリーミング / ダウンロード

あなたにとっては、ずっと遠い未来の彼方。草木はビルの壁を覆い、都市の骨組みは朽ち果てて、風は絶え間ない悲嘆を繰り返していた
雨の強い日には、街路は水しぶきを上げ、この街に、この世界にあったはずの物語の足跡を洗い流そうとしていた──。

終わりを迎えた世界で旅を続ける少女、ミゾハ。はるか昔に世界から失われた「物語」を探す捜索隊の一員として、同じ捜索隊の少年ノラエと、互いに通信機で励まし合いながら目的地を目指していた。彼らが旅の最後に見つける答えとは……。

全編を通じて朗読と音楽により物語世界が繰り広げられる、ユキニフル初の朗読音楽劇。

アーティスト情報

"