建物内部は、酷く荒らされていた。それほど昔のことではなさそうだった。
キリグモの死体がまた一つ、二つと倒れていた。
争い合ったような跡がある。
床には、銀色に輝く円盤と、その破片が散らばっていた。
メロディに物語が乗せられたものは、歌と呼ばれた。この円盤は歌を届けるために使われていたらしい。
破片をつかんで、そこに込められた物語に思いを馳せる。
地下に降りていく。上階と繋げられたダクトから、外の光が入ってきていて、あまり暗くはなかった。
通路を進み、突き当りの分厚い扉を開く。
広い。天井は高い。まるで、各地に残る礼拝堂のようだ。
奥に、見慣れた薄茶色の服に包まれた、何かを見つけた。
駆け寄る。
人の身体だった。
その身体はもう朽ちかけていて、遺体と呼べるかもわからないほどだった。
でも、わたしはそれが誰かを知っている。
涙が出た。悲しみからなのか、別の感情からなのか、わからなかった。
ノラエは、ずっと前に、ここで死んだんだ。
わたしはそれを知っていた。
でも、信じたくなかった。
わたしにとって、たったひとりの大切な存在だったノラエ。
帰ってこない仲間たちを、そして、彼らが探していたものを探しに行くと、ノラエは言った。
わたしはノラエを止めた。それでもノラエはその旅路を選んだ。
帰ってこない理由なんて、考えなくてもわかっていた。
それでも、それでも……。
- 作詞
宏川 露之
- 作曲
ein himinn
ユキニフル の“探していたもの”を
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ストリーミング / ダウンロード
- 1
水没都市
ユキニフル
- 2
ノラエのテーマ
ユキニフル
- 3
ボートに乗って
ユキニフル
- 4
夜、焚き火のそば
ユキニフル
- 5
キリグモ
ユキニフル
- 6
旅の途中
ユキニフル
- 7
初めてのショッピングモール
ユキニフル
- 8
海辺の施設
ユキニフル
- ⚫︎
探していたもの
ユキニフル
- 10
ミゾハのテーマ
ユキニフル
- 11
千年後の僕らも
ユキニフル
あなたにとっては、ずっと遠い未来の彼方。草木はビルの壁を覆い、都市の骨組みは朽ち果てて、風は絶え間ない悲嘆を繰り返していた
雨の強い日には、街路は水しぶきを上げ、この街に、この世界にあったはずの物語の足跡を洗い流そうとしていた──。
終わりを迎えた世界で旅を続ける少女、ミゾハ。はるか昔に世界から失われた「物語」を探す捜索隊の一員として、同じ捜索隊の少年ノラエと、互いに通信機で励まし合いながら目的地を目指していた。彼らが旅の最後に見つける答えとは……。
全編を通じて朗読と音楽により物語世界が繰り広げられる、ユキニフル初の朗読音楽劇。
アーティスト情報
ユキニフル
物語と音楽をコンセプトにしたユニット。 冷たさや儚さで覆われた世界を「雪」に例え、そこに降り積もる"何か"をモチーフに名付けられたこのユニットは、故郷と居場所、後悔と喪失、それでも生き続けるということをテーマに独自の世界観を表現する。 小説とCDが同封される作品は、痛々しくも確かな手触りをもって描かれることで、フィクションであると同時に現実とも通底する圧倒的な詩世界を浮かび上がらせる。
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