千年後の僕らものジャケット写真

歌詞

ミゾハのテーマ

ユキニフル

どれくらい経っただろうか。

自分の呼吸の音が聞こえるようになったころ、崩れそうなノラエの手に握られているものに気がついた。

通信機だった。

ノラエがわたしにくれたものと同じ機種。

二つ見つけたからと言って、一つをわたしにくれた。

ずっと昔には誰もが所有していたほどにありふれたものだったらしい。

おそろいだと照れながら笑っていた。

そっと手に取る。かすかに差し込む陽の光のせいか、バッテリーは生きていた。

再起動する。

「自動応答を再開します」

女性の声が言う。それは、わたしの声だった。

この世界で、ネットワーク型のデバイスは作動しない。

けど、ノラエがくれた通信機には、ある機能が備わっていた。

人格を設定すれば、その人になりきって会話の相手をしてくれる。

通信機が作り出す、ささやかな現実の模倣。それが幻想にすぎないことはわかっていた。

離れ離れの間、ノラエはわたしを、わたしはノラエを模した人格と、会話の真似事をしながら旅をしていた。

ふたりとも、たったひとりきりで。

ノラエと、わたしの自動応答とのログを開く。

ノラエの言葉を思い出す。

「ぼくは先に旅に出ているから」

旅に出る前、本物のノラエはその答えをわたしに教えてくれていた。

「物語が見つからなくても、それを探すぼくのこの旅が、物語になるから。必ず君に聞かせてあげるよ」

ノラエの通信機の中。ふたりの会話。

そこには、たしかに物語があった。

横たわるノラエのそば。床に散らばる円盤や、ケースの破片の中に、一冊の本が落ちていた。

紙でできたその本は、年月の重みを受け、表紙はひどくくすんでしまっていた。

指先でそっと触れると、表面にひび割れが走っているのがわかる。

ただ、1枚ずつのページは、まだ役目を失ってはいないようだった。

  • 作詞

    宏川 露之

  • 作曲

    ein himinn

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あなたにとっては、ずっと遠い未来の彼方。草木はビルの壁を覆い、都市の骨組みは朽ち果てて、風は絶え間ない悲嘆を繰り返していた
雨の強い日には、街路は水しぶきを上げ、この街に、この世界にあったはずの物語の足跡を洗い流そうとしていた──。

終わりを迎えた世界で旅を続ける少女、ミゾハ。はるか昔に世界から失われた「物語」を探す捜索隊の一員として、同じ捜索隊の少年ノラエと、互いに通信機で励まし合いながら目的地を目指していた。彼らが旅の最後に見つける答えとは……。

全編を通じて朗読と音楽により物語世界が繰り広げられる、ユキニフル初の朗読音楽劇。

アーティスト情報

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