歌詞

しずかな紙の匂い

ページの音が子守歌になる

木枠の窓に薄い光

机の輪が丸く揺れる

猫が足もとで丸くなり

胸の呼吸がゆっくりそろう

指先に触れる紙の温度

遠い時計が淡く刻む

としょしつのひるねのまどろみで

今日の言葉をほどいていく

やわらかな影のリズムのままに

明日の入口を見つけ出す

見返しの色が秋みたいで

栞の紐が静かに揺れる

猫のひげがきらりと光り

笑みがひとつこぼれ落ちる

ひと呼吸して目を閉じれば

頁がそっと指をくぐる

としょしつのひるねのまどろみで

言葉はそっと澄んでいく

紙のざわめきのぬくもりだけ

胸にしまって眠りへ落ちる

背表紙の列が山みたいで

足音だけが通路を渡る

猫が椅子へ飛び乗ったら

影がふたつ重なって眠る

夢の端でページが反り

季節の色が音になって流れる

「今日はここでいいよ」と

小さな声が胸に灯る

としょしつのひるねのまどろみで

今日のページをとじていく

やさしい灯りに手をひかれて

明日のページをひらいていく

同じテンポでならぶ心拍が

静かな終止にほどけていく

本を閉じて伸びをひとつ

猫と静かな午後を分け合う