Lyric

随分遠くまで歩いたね、紺碧が紅掛かるまで。

ううん、疲れてない、と君は振り向かずに石を蹴った。

ちょっと休憩しよう、と海の聴こえるここで腰掛けた。

どこまで話したっけ、と問うと君は、やっぱり泣いていた。

颯と潮風が凪いだ。君も落ち着いたみたいだ。

率と視線を見上げた。視界の限り二色になった。

この海の先は見えますか、海の先の音聞こえますか。

溌と気付いたあの日から、その音は僕を止めないだろうなあ。

現実と想像の境界上、なぞって波間が遠のいた。

限りを知ったのに、一層現実が美しいから。

また桜が咲く季節に、僕はここを去ろうと思うんだ。

だから、今は。

止めないで、阻まないで、

って君には言わないから。

触れさせて、収めさせて。

向こう側に続く未知を。

夢だって、空想だなんて、

君はきっと謂わないんだな。

でも、波に霞んだ前の景色をこの胸に射止めたいだけなんだ。

向こうに行ってみたい、と呟くといつも揶揄われた。

埋もれるぞ、危ないぞと大人はイツモヤサシクミチヲシイテクレタ。

ひととひとが犇めき合う、あの街で息を潜める。

そういう現実がいいんだ、この町でぼくを潜めるより。

そろそろ歩こうか、と僕は立ち、砂を払った。

「君と歩いた町の空には。思い出が溶け込んでるんだ。だから、私は、」

震える君の声は止まった。

波の音も、どっかの風鈴の音も、

止めないで！

止めないで、阻まないで、

いつか証明してみせるよ。

触れさせて、収めさせて。

海岸線に落ちていない未知を。

夏にはさ、此処に戻るから、

一緒にこの渚を歩こうよ。

紅から群青に変わるまで、

溶解た星空を一緒に見るから。