落とし物センターのジャケット写真

歌詞

落とし物センター

上田真育

午前零時 三番ホーム

行き先のない電車が止まる

「番号札 零四三番」

低い声が

天井から降ってきた

硝子の向こうに並んでいる

片方だけの手袋

名前の消えた学生証

鳴らなくなった目覚まし時計

その奥に

透明な箱がひとつ

ラベルには

十七歳の夏

係員は無表情で

「保管期限は過ぎています」

僕はなぜか

笑ってしまった

なくしたことさえ

忘れていたものほど

見つかった瞬間

胸に重い

お呼び出しします

お預かりしていた未来が 一点

改札の向こうで

持ち主を待っています

お心当たりの方は

昨日を証明できるものを持って

最終電車までに

窓口へお越しください

二番棚には

言えなかった「ごめん」

四番棚には

使わなかった勇気

鍵の束には

開けなかった扉が混ざり

古い傘から

あの日の雨が落ちていた

「こちらもあなたのものです」

差し出された封筒には

差出人も

宛名もない

中には一行

元気でやっていますか

それだけだった

思い出せない声ほど

耳の奥で近くなる

忘れたふりは

返却の理由にならない

お呼び出しします

お預かりしていた未来が 一点

傷や汚れは

そのままでのお渡しです

返品も交換も

過去への発送もできません

それでもよろしければ

名前をここへ

係員が最後に

小さな箱を置いた

「これは落とし物ではありません」

蓋を開けると

何も入っていない

「空白です」

「あなたがこれから

入れるものです」

遠くでベルが鳴る

ホームの時計が

初めて動き出す

僕は番号札を

ポケットに戻した

受け取らないものが

ひとつくらいあってもいい

お呼び出しします

お預かりしていた未来が 一点

持ち主はもう

ここにはいないかもしれません

それでも朝は

定刻どおり到着します

名前のない空白を持って

始発電車へ

お乗りください

午前零時 三番ホーム

行き先表示が

ゆっくり変わる

「現在地」

  • 作詞者

    上田真育

  • 作曲者

    上田真育

  • プロデューサー

    上田真育

  • マスタリングエンジニア

    上田真育

  • グラフィックデザイン

    上田真育

  • ボーカル

    上田真育

  • ソングライター

    上田真育

  • プログラミング

    上田真育

落とし物センターのジャケット写真

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  • ⚫︎

    落とし物センター

    上田真育

上田真育のシングル『落とし物センター』、各種ストリーミングサービスにて配信開始。

駅の片隅にある落とし物センターを舞台に、失くした記憶や選ばなかった未来を描いた、都会的でビターなオルタナティブ・ポップ。

番号札を握りしめた主人公の前に差し出されるのは、傘や鍵ではなく、いつか置き忘れた人生の一部。

ユーモアを含んだ言葉とミステリアスなサウンドが交差する、上田真育ならではの物語性に満ちた一曲。

アーティスト情報

  • 上田真育

    上田真育(うえだ まいく)|境界を超えるクリエイター 絵、音、映像──紙も、音も、光も、すべてが表現のキャンバス。 アナログからデジタル、直感から構築へ。ジャンルや道具に縛られず、感性のままに創り出す。 上田真育は、視覚と聴覚のその先へ、あなたを連れていく。 YouTubeでも作品を発信中。今、この瞬間の“リアル”を表現し続ける。

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