Tarado1&2 Front Cover

Tarado1&2

Track List

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[CDリリース時 帯コピー]
<遊びでやってるんじゃない。遊びがヤってるんだ!>
愛に飢えた×××のイカれたアミーゴども!
そして夜毎のブルースに悶え泣くエロイ奥さん!
待たせちまったな。
菊地成孔主宰レーベルご開帳第一弾。
噂が噂を呼んだ平成の腐れ弾。
諸君、マタドール・ペルーの準備はできてるか?

[CDリリース時 封入ライナーノーツ]
逐語訳すれば「強烈な臭い」とも「殺人者の匂い」とも訳せ、意訳ならば「ファンクでお前をヤってやる(ファンクとは「臭い」の意)」とも「最悪のファンク組」とも「腐れ玉」とも、何とでも訳せる、21世紀型のジャパニーズ・アンダーグラウンド・チカーノ・ロック・ユニットであり、宇宙意志の遍在体であるKILLER SMELLS/キラー・スメルズ(以下スメルズ)は、まず、末端構成員である菱田エイジをアテネ・フランセ映画美学校/音楽美学校メソッド科に入学させる。という手段で我々とファースト・コンタクトを計った。
菱田の入学は2008年で、彼はスメルズからのミッションに忠実に、教室内に於いては、尋常ならざるオーラだけを振りまきつつ、静かで模範的な生徒として1年を修学に費やした。初等科修了時である2009年の卒業制作発表では、スメルズは作品を未だ発表していない。菱田エイジ名義のいくつかの単調なブルース・ロックは、この教室の卒業制作の一般的な水準を大きく超える物ではなかった。菱田は高等科に進級し、さらに1年、模範生として静かにかつ情熱的に修学を続けた。
 翌年の高等科修了時の卒業制作発表会に於けるスメルズの物質化/具体化は、恐ろしいほどに周到かつ凄まじいほどに激発的だったと言える。彼等は衝撃の1st album「TARADO」を卒業制作発表会場で予告無くドロップするというテロリズムにも似た暴挙によって、初めて地球上に姿を現すや否や、賞賛と嘔吐感と爆笑の混濁によって騒然とする教室全体を瞬く間に占拠し、自らの誕生という最強のアジテーションを我が国に叩き付けた。今は亡き京橋は片倉紡績ビルの地下1階、映画美学校第一試写室から、我が国最初のラテン革命は始まったのである。その、聴く者を過剰拒絶させると同時に過剰移入せる扇動力は凄まじく、講師であった私でさえ否応も無く、その場でキラースメルズの構成員となった。菱田エイジ卒業後の2011年に発表された「TARADO2/NIGHT TRAIN TO RIO DE JANEIRO」の歌詞にもジャケットにも頻出する「KILLER SMELLS IS YOURSELVES」というメッセージは、悪魔的な同一性の召還とともに、あらゆる混血性を意味し、遠からず帝都トウキョウのビルというビルの壁面に掲げられるであろう。

我が国は建国以来、判断保留と曖昧さを国是としてきた。のど元過ぎれば熱さを忘れ、すぐにキレるがすぐにデレる、幼児退行的な集団ヒステリーの直中で浅い呼吸に喘ぐ我々は、恐るべき事に太古の昔、ゴールデン・ハーフ(「TARADO2」は、このグループと風吹ジュンに捧げられている)のメンバーの中で、エバを推すのか、マリアを推すのか、或いはルナやユミほ推すのかすら、営々と曖昧にし続けて来たのである。しかしもう、その時代は終わる。我々は選択する事を迫られており、「曖昧さと回避」等と言いながら曖昧に回避する、といったお家芸が演じられる事は二度と無い。選択肢は2つしかない。純血か、混血かである。繰り返す。今後我々は、純血を選ぶか、混血を選ぶか決定しなければいけない。それによって、われわれが歴史的に曖昧にしてきた総ての選択が自動的に決定するのである。

 生まれた瞬間から一貫して混血を選択していた私と、私を代表とする「ビュロー菊地」はスメルズ側と直接交渉のテーブルに着き(交渉の場に現れた菱田エイジは、短躯によってテーブルから顔面の上半分しか出ていなかったが、その交渉術は、スメルズが人類-特にエルサルバドルのマフィア-から如何に多くを学んでいるかを如実に物語っていた)、共闘の宣誓書にお互いのサインを交わした。この宣誓書に従い、マスメディアへの最初の露出はTBSラジオ「菊地成孔の粋な夜電波/テキーラ特集」に決定した。

 勿論、ここで言う混血は生物学的な意味ではない。生物学的には私も菱田エイジも純血である。混血の純血者も、純血の混血者もいる。これは同一性障害としてさえ扱われてこなかった領域である。2011年の一般的な特別性に付いては説明を要しない。しかし、2011年はキラースメルズ、SIMI LAB、映画「サウダーヂ」が、ほぼ同時に蜂起したという事実によって、我が国のラティーノ/チカーノ・カルチャーが幼少期/助走期を終えた事の宣言年であると言えるだろう。
 私が主幹を務めるDCPRGもペペ・トルメント・アスカラールも含め、ビュロー菊地は前田日明率いるTHE OUTSIDERを既存の格闘技団体の中から唯一支持し、キップ・ハンラハン率いるAMERICAN CLAVEとシンジケイト関係を結び、即ちローカル・アンダーグラウンド・ヒップホップとジャズの融合に尽力し、ラティーノ/チカーノ文化にヴォーテし続けて来たが、スメルズとの提携による本作のリリースは、本作に僅かに先立ちユニヴァーサル・ジャズ/Impule!レーベルからされるDCPRG「SECOND REPORT FROM IRON MOUNTAIN USA」と並び、その決定打にして最新のフェーズの一つである。

 我が国は現在、自殺者と自殺願慮不安に戦く者の量産国である。経済的な破綻や痴情の縺れ、共同体内での虐め等によるものではなく、哲学的/文学的とでも言える透明な根拠の自殺は過度に自立しすぎており、例えば通り魔による他殺と表裏同一の関係にあり、純他殺者とは言えない。ラテンの他殺は純他殺だが、日本の他殺は自殺の反転であり、自殺は自然死の領域まで曖昧に浸食した死の総てである。これは戦争も紛争も無く、声帯による口数と自我底辺からの強い爆笑と永続する激怒が少なく、運指による呟きと短期の強い苛立ちと苦笑に自家中毒を起こしている純血者が文化的な優位を占め続けた我が国が導いた結論だが、その趨勢はここ数年で劇的に変わりつつある。我が文化的な混血者は、音楽という原初にして最終の手段を使って我が国に鍼灸の針を突き刺すだろう。つまり、こういう事だ。死にたい奴は勝手に死ね。しかしそれは、このアルバムを聴いてからだ。

ビュロー菊地代表/DCPRG主幹/キラースメルズ末端構成員
菊地成孔
(こちらのライナーノーツは2012年の発売時に掲載の物をそのまま掲載しております。)

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Bureau Kikuchi Label