Mokumedori

彩られた記憶の断片に潜在するノスタルジアとメランコリー。トイ楽器やアコースティック楽器で創り出すのは「動く絵本」の世界。造形アーティストとしての顔も持つソロミュージシャン木目鳥のファーストアルバム。

アヴァンポップ・トイミュージックや現代音楽の影響を独特のセンスで昇華し緻密に編み上げられた音世界は動く絵本のサウンドトラック。造形や装飾等演出上のアートワーク全てをも手掛け「おもちゃの楽器を奏でるミミちゃんとその頭に棲む”モクメドリさん”の世界」を描き出している。そのキュートさと見え隠れするダークネスはその音楽と相まってシュールで時にノスタルジック。子供の空想へと導かれるイントロのtomoshibiから童話の森に迷い込んだようなdans les boisへと続き物語はエンディングshinonomeまで深みを増していく。

チェコアニメやフランス映画の視覚的な世界観と音楽や効果音の相乗効果で成り立っているところに影響を受けているという木目鳥の世界観は、ロマン・カチャーノフやヤン・シュヴァンクマイエル、あるいはジャン=ピエール・ジュネ等の映像作品をも彷彿させ、それはアルバムにおいて終始一貫して現れる。随所に散りばめられたトイピアノ、鍵盤ハーモニカ、ハルモニウム、グロッケン等の楽器は子供の合奏を表すためのものであり、一つ一つ丁寧に組み上げられた楽曲はそれ自体から物語性を発している。