Lyric

水面は静かに揺れて母は独り言つ

「この町の何もかもが厭になったのよ」

ゴミが散らばる浜辺も

子どもの視線も

規則正しく並ぶタイルも

塩を含むその風はいつも生臭く

車も人も景色も錆びつかせるという

油を差しておくのさ 心には特に

すぐに滑りが悪くなるから

安心しなよ

心はずっと安心できないままだから

そのくせ死ねない理由が増えるから

明日もまともにならなくちゃな

幸せそうに笑わなくちゃな

人を恨むのも辞めなくちゃな

わかってるよ

わかってるのに

温かい場所へ行きたいのに

それが叶わずに溺れかけて

今でも僕たちは迷う魚

夜の淵で漁火が手招きしていた

それは蠱惑的でいて見かけは美しい

一目散に飛び付き 攫われた彼は

ある意味幸せだったのかしら

リアカーを自家用車と宣うお婆さんが

「迎えがいつ来たってかまわないわ」と、笑った

その笑顔の皺の隙間に諦観を挟んで

それこそ僕の目指す光でした

明日も仕事に行かなくちゃな

人とうまく付き合わなくちゃな

まっとうに生きていかなくちゃな

わかってるよ

わかってるのに

あの輝きに照らされるほど

おれの不出来さが浮かび上がる

今でも僕たちは迷う魚

怖くても

愚かでも

弱くても

息を止めて耐えている

今日もおれはここにいる

明日は洗濯物を干して

溜まった食器も洗い上げて

できれば誰かと愛し合って

わかってるよ

わかってたのに

汚れた浜に打ち上げられて

じたばたと鰭を叩きつけて

それでもこの場所で生きたくて

わかってるよ

わかってんだよ

悲しいんじゃなくて疲れただけ

君に嘘をつかせたのは誰

未だに僕たちは足掻く魚