天使のミスディレクションのジャケット写真

歌詞

天使のミスディレクション

msy

痛い……痛い……

拭いた甲斐もあらずまたじわじわと滲んだ。

意識が遠退いて行く……

痛みと寒さで、薄暗い三畳くらいの倉庫で目を覚ました。

酷い匂いだ。

何をやったってここから出られそうもなく、ただ誰かの助けを待つことにした。

しばらくして、外から誰かの声が聞こえた。

助けを求めようとしたが、咄嗟に言葉を呑んだ。

「やっと捕まえたよ。知らん男に邪魔をされかけたけど、そいつ諸共引っ捕らえて殺してやったさ」

あまりの事に理解しかねていた私は"ソレ"の突飛すぎる行動をも許してしまった。

口に手が回ったのだ。

単純に喋らせないためだったのか緩かったその手に何となく覚えがあった。

恐る恐る振り返ると、直ぐにここに居る理由が分かった。

その少女の泣き出しそうな顔は、腕を引っ張られトラックに乗せられそうになっていた時と同じだった。

やたらと下を向く少女の目線の先には、赤い血溜まりが広がっていて、痛みが強くなった。

押さえる手を絶えず見るもんで、ごめんなと微笑むと、それを退けて患部に口を押し付けチューチューと吸い始めた。

困惑と強烈な痛みで、またある行動を許すことになる。

その音を聞きつけて悪人が荷台を開けるまでの、聞こえたであろう物音に気づくことができなかったのだ。

「お味は?」と財宝を眺めるかの様に恍惚とした悪人と、相対する荷台の惨事はどう考えても辻褄が合わないが、そんなことに頭を使っている余裕はなかった。

次の皿に手を付けるかの如くジロリと目線を悪人の方に遣った瞬間、今までの振る舞いからは考えられないスピードで首元に喰らい付いた。

もう少女とは呼べないが、初めて見せるうっとりとした顔が天使の様に見えた。

そして、その天使に見惚れてまたまたある出来事の予兆に気づくことができなかった。

  • 作詞

    msy

  • 作曲

    msy

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