Lyric

駿河国賤機の下村に　位置する清き鯨ヶ池

賤機山と街道に挟まれた　千六百坪の池

水清くさして深くない池が　できるきっかけとなった言い伝え

下村の福成権現の北に　ぽっかりと諸岡山という名の丘

形が鯨に似ていると　ついた名前が鯨ヶ丘

突然丘の上からまるで　潮吹く鯨の如き噴水

流れ出た泥水は民家を襲い　広く田畑を荒らす

満ち満ちた大水で池ができ　鯨ヶ池と呼ばれた

祈りを捧げる人々に神は　「ここは霊場ゆえ、永遠に水湧く」

人々が池にお神酒を注ぐと　泥水はたちまち清水になる

あゝ鯨ヶ池の伝説

駿河国賤機の下村に　位置する清き鯨ヶ池

賤機山と街道に挟まれた　千六百坪の池

水清くさして深くない池の　魚はみな片目という言い伝え

水見色の長者の娘の元に　夜な夜な通う男がいるという話

次第に痩せ衰える娘を　案じた母は男の袖に

糸を結んで後をつけ　その正体をつきとめた

なんと男の正体は足久保山の　古池の主たるまだら牛

怒った長者は古池に　いくつもいくつも焼け石を投げ込んだ

傷追い出てきた片目の主は　下村の鯨ヶ池に逃げ込んだ

以来この池の魚はすべて　片目の魚になったという

あゝ鯨ヶ池の伝説