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うつをわずらって2年半社会から遠ざかっていた。世界はコロナ禍のど真ん中にあり、ひとりになるにはちょうど良い時期だったのかもしれない。医者の言いつけを守り、とにかく一日に一度は外に出ることだけが日課だった。毎日哲学の道を歩き、南禅寺を経由して、疏水の水面に揺れる水鳥を眺める。いつも指先が冷たくしびれていたが、20分ほど歩くとほんの少し血が通う気がしたので、毎日8キロ歩いた。音楽は聞けなかったので役に立たなかった。夏のある日、夕立にやられてずぶ濡れになった。慌てて駆け込んだ桜の樹の下で「雨が降るには理由がある」というひらめきが起こった。そんな背景がこの曲にはある。2020年の話だ。
うそがなく、酔わず、不完全で、美しい余白があり、妄想ではなく現実に作用する音楽やその他。まるで私が投げたZIPファイルが、あなたの中で解凍し、新しい感情が開くような。そんなものをいつもつくりたいと思っている。私は媒体としてあなたと音楽を繋ぐが、作品はあなたの手で再構築され完成に向かう。あるいはつばを吐かれ、ただ忘れ去られる。いずれにしてもあなたの心は、選択し、動いた。それは私ではなく、あなたが成し得たことだ。全ての創作物はそのようにして生を与えられている。命を与えているのは、あなただ。今日も俺を生かしてくれてどうもありがとう。
HOTMILK!!RECORDS