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『きさらぎ』は、二月の風がまだ冷たい街で、ふいに“見覚えの横顔”に出会ってしまった瞬間の歌です。
確かめるには少し遠くて、見間違いと言い切るには近すぎる。たったそれだけの距離が、いちばん残酷に迷わせる。
雨に滲む灯り、濡れた石に落ちる赤、草履の音だけがやけに響く道。
何も起きていないふりをしながら、世界の輪郭だけがかすかに揺れていく。
通り過ぎることも、振り向くことも、どちらも同じくらい難しい。そんな“言葉になる前の時間”を閉じ込めました。