もののあはれ

  1. もののあはれ

この曲は「斑」に収録されている「月界の御子」の後日譚であり、時系列的には「物の怪草子」と同時期にあたります。「もののあはれ」は御子の昼の姿であり、「物の怪草子」は御子の夜の姿とします。「月界の御子」では天の羽衣を断ち切り、地球に残る道を選んだ御子は後に愛する女性と結ばれますが、不老不死である月の民に比べて人の寿命はあまりにも儚いのでした。愛する女性と共に四季を巡らせ、最期を看取った後も地球に残った御子は、夜な夜な蔓延る悪しき妖を討ち、また仮の姿としてはお供の黒兎達と共に和菓子屋を営むのでした。和菓子は四季折々の風情が投影される趣深いものです。タイトルの「もののあはれ」とは自然や人生の中で感じる、しみじみとした情趣や繊細な情感のことであり、日本の美意識と捉えられるひとつの概念。それは和菓子と通ずるものがありますね。そもそも月には季節がありませんが、実際に月から地球にやってきて「もののあはれ」を感じたことで、御子の心にも様々な変化が見えてきたのかもしれませんね。ちなみに地球以外で四季があるだろうと言われている惑星は火星、土星、海王星のようです。太陽に対して、赤道傾斜角と呼ばれる地軸の微妙な角度が美しい季節を生み出してくれているのですね。日本は特に四季を感じられる国です。一年を通して様々な木々や草花が花を咲かせ、やがて実りを結びます。また生きとし生けるものは天地を駆け抜け、新たな命を繋ぐことで一生を全うします。僕が自然を求める理由は、生まれ育った地が空と森と海に囲まれた環境であったことが大きな要因であると思っています。勿論、都会には都会の利点はありますが、心を預けられる場所はやはり自然ですね。楽曲は四つのサビから成り立っているので、春夏秋冬の趣を歌詞に込めました。御子は四季を通じて愛しい人との想い出に浸っていくのですが、人の記憶というものは五感によって想起させられるものなのです。皆さんが想い出す、風物詩の向こう側に立つ人は誰でしょうか。それが現存する人であれ、しない人であれ、少なからず自らの人生に影響を与えた存在かと思います。視覚や聴覚などは大脳新皮質に伝わることにより、記憶が呼び戻されるわけですが、嗅覚は本能を司る扁桃体や記憶を司る海馬に伝わります。それによって香りに触れることは想い出に大きく影響を与えるようです。懐かしい香りを嗅ぐと、幼少の頃を想い出したり、なんとなく胸がぎゅっと締め付けられる出来事は、誰もが感じたことがあるはずです。命あるものの全てが、いつか必ずやってくる死の別れ、頭では理解できていても心が整理できるまでには長い時間が必要です。僕自身も家族や恩人、友人や動物達との別れを幾つも経験してきました。四季を感じる度、折に触れては想い出すことがあります。過去は変わることなく、同じ日は二度とやってこない。愛しい人と過ごせた時間は月の民から見ると僅かな時間でしたが、それでも御子の心に生まれた感情は紛れもない真の愛だったのでしょう。サビ毎に季を想わせる動物も出てきます。春は仲睦まじく愛し合う猫を見て、かつての自分たちを想い出しています。夏は金魚のイメージですが、金魚が日本でその存在を知られるようになったのは鎌倉時代と言われており、平安時代にはまだ知られていません。金魚の先祖は鮒ですが、桶の中で一匹悲しげに泳ぐ灰色の姿を見て、せめて鮮やかな赤い色(所謂赤い金魚)にしてあげられたら、幾分か楽しく見えることだろうという気持ちを描いています。大切な人と過ごす時間はあっという間に過ぎていきますが、独りきりの時間はとても寂しく、より長く感じてしまうことでしょう。二度と逢えない想い人を偲び、天へ届かぬ文を綴るのでした。秋は兎ですね。月は御子にとっての故郷です。月を離れたとはいえ、決して故郷を嫌いになることはできません。お供の兎達も満月の夜には空を見上げて想い出すのです。ちなみに「~跳ねる兎や」の部分の末尾の「や」は間投助詞で詠嘆を意味する「~だなあ」「~よ」になりますが、そこは和菓子屋の「うさぎや」にかけています。冬の動物は鶴です。「~澄み登りたる」は音や声が澄んで高く響くという意味と、空や水などが曇りなく澄むという両方の意味があります。冬は空気が澄み渡ることと、鶴の声が響き渡るという両方の意味を込めました。冬は物悲しいですが、やがて季は巡りまた春がやってくるのです。四季を彩った菓子を一口食べればその季節の味がします。忘れがたい数々の記憶が蘇る中、御子は大切な想い出を和菓子に込め、生きていくことを決意するのでした。自分の中で生き続ける、大切な人と共に…。

浅葱

浅葱(ASAGI) Dのリーダーであり、有限会社GOD CHILD RECORDSの代表を務める。Dでは全楽曲の作詞、またメインコンポーザーを担い、作品のシナリオとトータルアートをプロデュースしている。 【D活動履歴】 2003年4月、Dを結成。自社、有限会社GOD CHILD RECORDS を立ち上げ、精力的に活動。動員やセールスを増やし一気に注目を集める。リリースされるCDが軒並みオリコンインディーズチャート1位を獲得。総合チャートでも上位を記録し、2006年末には渋谷C.C.Lemon ホールをソールドアウト。2007年秋、Smile Companyとマネジメント契約。2008年5月7日シングル「BIRTH」でavex traxよりメジャーデビュー。オリコン週間シングルチャート(5月17日付)にて初登場8位を獲得。その後も「闇の国のアリス/波紋」などリリースする作品がゲームや映画、TV 番組などのタイアップとなり、軒並みオリコンチャートTOP10入りを獲得する。(「SnowWhite」では自身最高位となる6位を記録)メジャー1stアルバム「Genetic World」を発売。(オリコン週間アルバムチャート初登場11位)2011年1月にはヴァンパイアコンセプトを掲げたフルアルバム「VAMPIRE SAGA」をリリース。海外盤も発売し、世界進出。初のEUツアー(7カ国10公演)を大盛況のうちに終える。また、アメリカでは全米第二位のイベント「A-KON」にメインアクトとして出演。世界にDの名を広める。2013年4月、10周年を迎え渋谷公会堂にてSpecial Premium Live「Bon Voyage!」を行い、ビクターエンタテインメントとの再メジャー契約を発表。2014年には47都道府県ツアーを行い、12月にはファイナルの舞浜アンフィシアター公演をソールドアウトし、大盛況のうちにツアーを終える。ASAGI の顎関節症により活動休止するが、2015年8月29日の赤坂BLITZ にて復活。2階席を含めた完全ソールドアウトとなる。2015年9月16日にリリースした最新シングルHAPPY UNBIRTHDAY はオリコンデイリーチャート最高位10位、ウィークリーチャートでは初登場14位にランクイン。そして 2016年4月、ソロとしてもメジャーデビューを果たす。 Dの創り出す唯一無二の独特の世界観は、ティム・バートン監督にも愛されている。

アーティストページへ

GOD CHILD RECORDS