Oasis in 2op - "CALL VOICE"のジャケット写真

Oasis in 2op - "CALL VOICE"

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「温故知新」という言葉がある。「古きをたずね、新しきを知る」のような意味合いの言葉だ。いま本作の音源を聴きながら感じている未体験の"新しさ"は、果たしてこの故事成語に当てはまるのだろうか、それとも…?

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 かつてゲーム音楽作曲家として「Xak」「FRAY」「幻影都市」などを手がけた新田忠弘が、近年の和楽器奏者としてのキャリア(尺八を主な演奏楽器とし"新田みかん"名義で活動)を経て、再びデジタルサウンドの世界に帰ってきた。
 本作「CALL VOICE」は、新田が昨年から推進するMSX搭載音源に焦点を当てた音楽プロジェクトOasis in 2op(2オペレーターFM音源にちなんだユニット名!)による2作目、6曲入りのミニアルバムである。昨年の1作目は自身のセルフカバー楽曲が中心だったが、本作は全曲オリジナル。サウンドとしては過去のゲーム音楽時代のエッセンスを交えつつも、全体的に落ち着いたトーンで重厚な響きをメインとした、いぶし銀のような渋い仕上がりだ。

 それでは、個別の楽曲について詳しく見ていこう。
#1「y-city」
新田が創作活動の大半の期間を過ごした三重県四日市市。その街並みをモチーフとした曲でアルバムは幕を開ける。屈指の工場夜景でも有名な四日市だが、そのコンビナート群が目に浮かぶようなナンバーだ。
#2「&HB4」
どこか和の要素が感じられる曲。こうしたテイストが顔を出すのは彼が和楽器奏者としての経験を積んだ事と決して無縁ではないだろう。アコースティックバージョンも聴いてみたい気がする。
#3「B5$」
ゲームのサウンドトラック風の要素が色濃く感じられる、ミドルテンポのシリアスなナンバー。サイバーパンクな世界観が似合いそうだ。
#4「u-ka」
彼が蝉(セミ)の「羽化」する様子に着想を得たという楽曲。生命の儚さ、厳しさといった要素が巧みに表現されている。2000年代以降、彼が創作の拠点を自然の豊かな三重県菰野町に構えていた事が、こうしたインスパイアに繋がったのかもしれない。
#5「TP or FD」
テープかフロッピーか?、、、今や完全にレガシーと化した過去の記憶媒体を現代の世に問う、痛烈なアイロニー・ナンバー!(笑)
データのローディングに用いるカセットテープの信号音やフロッピーディスクのドライブ駆動音をSEとして使用するなど、心憎い遊び要素もちりばめられている。
#6「oasis」
ユニット名の一部でもあるoasisという言葉を冠したアルバム最後の曲は、美しいスロー・バラード。本プロジェクトが、かつてのMSXユーザーの心を癒すオアシスのような存在になれば…との思いが込められているという。
MSX音源分野の第一人者であるオーソリティーgyabuneko氏との、唯一の共作曲。(本プロジェクトOasis in 2opの協力者でもある)
曲の中で聞こえる不思議な鳥のような声は、キジバトという鳥の鳴き声をgyabuneko氏が耳コピしてMSX音源で鳴らしたという離れ技の代物である。

 振り返って考えてみる。ともすれば「チープな」と形容される事にもなりかねない80年代当時の音源チップの奏でる音楽は、限られた性能やさまざまな制約の中で、制作スタッフが工夫や試行錯誤を重ねた結果、何物にも代え難い独特の響きを持つに至った。「代替品の劣化版」ではなく「それでないと価値がない存在」になったと言える。

 そして本プロジェクト。音源スペックとしては80年代当時のMSX(PSG+FM音源)そのものでありながら、それを実機で「そのまま鳴らす」のではなく、サンプリングして再構築するという手法を用いて、「現代の楽器」として新たな命を吹き込んだとも言える。これもまた、制作スタッフの発想と努力の賜物である。

 本作は懐古趣味的なローファイ音源のリバイバル演奏などではない。当時の音源で奏でられた音色を、進化したテクノロジーで現代に甦らせた、まさに"新しい"試みだ。
当時も、今の世も、素晴らしい作品は制作者の真摯な取り組みによって作られるのだ。

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そう、これは「古きをたずねた」事で知り得た「新しさ」ではない。
現代に、生まれるべくして生まれた、音楽クリエイターの知恵と執念の結晶なのだ。


2021.10.15 林猫

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Oasis in 2op - "CALL VOICE"

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アーティスト情報

ニューフィールド