

呼吸は少しずつ荒く、でも、だんだん弱くなっていく。
見つけた食料はとっくに尽きていた。
もう着いてもいいころなのに、と何度思っただろうか。
脚を止めてしまえば、二度と歩き出せなくなる気がする。
その予感だけで、わたしはただ歩き続けた。
海沿いの、大きな橋の上。
風が吹く音、水面が揺れる音。わたしの靴が橋を踏む音。
人の気配が全くない海は、穏やかで、とても美しく、少しだけ寂しかった。
遠く、カモメの鳴き声が聞こえた。
橋を渡り切るころに、異変に気がついた。
倒れ込む人の影。
いや、これはキリグモの死体だ。外傷が激しい。
風に飛ばされそうなその死体は、わたしの目の前にある、大きな建物の方に向いて倒れていた。
巨大な棺桶。わたしが受けたのはそんな印象だった。
見上げるわたしの瞳を、すべて埋め尽くすような大きな建物。
わたしの目的地で間違いなかった。
ずっと昔。ここには無数の物語が集まっていた。
あらゆる人々が集まり、自らつくった物語を渡す人、それを探す人たちで、建物の中が埋め尽くされていたらしい。
この世界で、大きな戦争が起きたあの日も。
だからこそ、ここになら物語が残っているんじゃないかと、捜索隊は期待を寄せていた。
隊のほとんどが目的地に辿り着く前に命を落とした。
危険だからと同行を許されなかった、ノラエとわたしだけが残された。
- 作詞者
宏川 露之
- 作曲者
ein himinn
- プロデューサー
ユキニフル
- ボーカル
mar.

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ストリーミング / ダウンロード
- 1
水没都市
ユキニフル
- 2
ノラエのテーマ
ユキニフル
- 3
ボートに乗って
ユキニフル
- 4
夜、焚き火のそば
ユキニフル
- 5
キリグモ
ユキニフル
- 6
旅の途中
ユキニフル
- 7
初めてのショッピングモール
ユキニフル
- ⚫︎
海辺の施設
ユキニフル
- 9
探していたもの
ユキニフル
- 10
ミゾハのテーマ
ユキニフル
- 11
千年後の僕らも
ユキニフル
あなたにとっては、ずっと遠い未来の彼方。草木はビルの壁を覆い、都市の骨組みは朽ち果てて、風は絶え間ない悲嘆を繰り返していた
雨の強い日には、街路は水しぶきを上げ、この街に、この世界にあったはずの物語の足跡を洗い流そうとしていた──。
終わりを迎えた世界で旅を続ける少女、ミゾハ。はるか昔に世界から失われた「物語」を探す捜索隊の一員として、同じ捜索隊の少年ノラエと、互いに通信機で励まし合いながら目的地を目指していた。彼らが旅の最後に見つける答えとは……。
全編を通じて朗読と音楽により物語世界が繰り広げられる、ユキニフル初の朗読音楽劇。
アーティスト情報
ユキニフル
物語と音楽をコンセプトにしたユニット。 冷たさや儚さで覆われた世界を「雪」に例え、そこに降り積もる"何か"をモチーフに名付けられたこのユニットは、故郷と居場所、後悔と喪失、それでも生き続けるということをテーマに独自の世界観を表現する。 小説とCDが同封される作品は、痛々しくも確かな手触りをもって描かれることで、フィクションであると同時に現実とも通底する圧倒的な詩世界を浮かび上がらせる。
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