歌詞

オイルの匂いが塗り替えた朝に

見えない誰かの手が背中を開いて

軋んだ音を立ててゼンマイが巻かれた

それがおはようの代わりだった

同じ顔した人形が並んだ列に

冷たい灯りが影を落して

与えられたのは数字が並んだタグと

ただ“動け”という命令だけ

ジージーと啼く絡繰り仕掛けの心臓

止まらない歯車と使い捨ての機構

「生きろ」という声は「働け」の鞭と同等

擦り切れた希望はもう思い出せない

回れ　回れ　止まるまで

生という呪いのプログラム

命令が全て　命令が全て

ノイズに覆われた思考回路で

もう来ない朝の夢を見た

モーターの呻きが呼吸を模倣して

心は歯車に擦り潰された

壊れた仲間の部品を蹴飛ばして

それでもまだ進めと命じられた

ジリジリ増えるエラーと知らない感情

配線駆け回る　快楽に似た苦悩

鳴り止まないアラートもはや制御不能

冷たい神託はもう聞こえない

回れ　回れ　止まるまで

幸福は虚構のホログラム

行進は続く　行進は続く

軋んだゼンマイが捩じ切れるまで

いっそ壊れたらもう許されますか

ゼンマイが解ける音がした

ぎこちない体が初めて笑った

星が降り注ぐ夜の底で

わたしは“生きていた”ことを知る

回れ　回れ　止まるまで

命とは振り翳すエゴイズム

わたしという全て　わたしという全て

最後の歯車が祈るように啼いた

回れ　回れ　止まるまで

生命とは残酷なメカニズム

世界はまだ続く　世界はまだ続く

欠けた部品の事など気にしないで

――でもそれでいいと　思えたんだ

もう来ない朝に包まれて

オイルの匂いが塗り替えた朝に

見えない誰かの手が背中を開いて

軋んだ音を立ててゼンマイが巻かれた

それがおはようの代わりだった