

ピロン
アップデートがあります
ざわめきの奥で
私の名前だけ聞こえる
私の名前だけ聞こえる
グラスの音より近くで
私の名前だけ聞こえる
誰もこっちを見ていないのに
土曜日の夜がたそがれて
シャンデリアが少し遅れる
私はまだ
笑うタイミングを探してる
パーティー会場の端の席
紙ナプキンが四つ折り
氷の溶けたカクテルに
小さな月が沈んでる
知らない人の仕事の話
知らない人の結婚の話
相づちだけがうまくなって
靴の中で足が迷う
ふふっ
今
呼んだよね
カクテルパーティー効果
説明は知っている
だけど名前が聞こえるたび
胸の奥だけ席を立つ
私の名前だけ聞こえる
拍手の向こう側から
私の名前だけ聞こえる
たぶん誰も呼んでいないのに
アップデート通知が光って
画面だけが新しくなる
私はまだ
古い会話を保存してる
ピロン
あとで
テーブルの下のバッグに
スマホが静かに震える
今すぐ更新しますか
あとで通知しますか
どちらでもない顔をして
私はストローを噛む
遠くの笑い声の中に
同じ名前が混ざっていく
運命って言うには軽すぎて
偶然って言うには残りすぎる
聞きたい声じゃなかったのに
聞こえたことにしてしまう
たそがれのライトが
輪郭をゆるく削っていく
ねえ
誰かの会話に
私が少し
混ざってない?
私の名前だけ聞こえる
出口の近くで立ち止まる
私の名前だけ聞こえる
呼ばれてないのに振り向いた
アップデート通知は消えて
パーティーはまだ続いてる
私はまだ
帰る理由を探してる
グラス
紙ナプキン
氷
通知
笑い声
たそがれ
誰も呼んでいない名前が
まだ耳に残ってる
- 作詞者
MASAQUI
- 作曲者
MASAQUI
- プロデューサー
MASAQUI
- プログラミング
MASAQUI

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わたしの名前だけ聞こえる
MASAQUI
「わたしの名前だけ聞こえる」は、土曜日の夜のパーティー会場を舞台に、雑踏の中で自分の名前だけが不自然に耳へ届く現象を描いた楽曲です。
カクテルパーティー効果という認知現象をモチーフにしながら、人混みの中で生まれる微かな孤立感や偶然と運命の境界が曖昧になる感覚を、ローファイな質感と不安定なボーカルで表現しています。
誰も呼んでいないはずなのに聞こえてしまう名前。その違和感が静かに増殖していく夜の記録です。



