Lyric

静かな道を抜けて

瞬くサインがひとつ

どこかで間違えたようで

でもそれすら嬉しかった

名前のないそのバーに

扉はいつも静かに開く

「お疲れさま」と優しい声

だけど　誰の声かはわからない

グラスに映るネオンの中で

溶けていく時間の記憶

ただ座っているだけで

何もかもが　整ってしまう

ここに来ればすべてがある

望みも夢も　手に取るように

美しい人たちが笑う

でもひとつだけ　忘れてはいけない

出たことがある人は　いないということ

マスターは言葉を選ばない

でも不思議と心がほどける

隣の常連は微笑む

その目は　すべてを見抜いている

隣の席がまた埋まって

誰かが小さくため息をつく

「もう終わりだね」って囁いた

それが始まりだったのかも

ここに来ればすべてがある

失ったものさえ　取り戻せる

でもその代償に

何を差し出すのか

答えはいつも　グラスの底に

誓いは　静かなピアノ

契約は　瞬きのあいだ

正しいも　間違いも

ここでは　もう　意味を持たない

ここに来ればすべてがある

触れるだけで　忘れられる

君が　何を望んだのか

それすらも　溶けてゆく

（出たことがある人は　いないということ）

（また来るといい…）

（ここは　いつでも　待っているから…）