Keisuke Front Cover

Lyric

Keisuke

Hitomi Onochi

Soprano saxophone: Keisuke Yamamoto

Piano       : Hitomi Onochi

____音楽のどういうところがすきなの?

質問でか!

でも、ひとみちゃんと通じてると思うよ。

コミュニケーションとしての音楽がすきかな。

自分が、言葉をつくしても言い表せない部分を伝えてくれる媒体というか。

でも、それ以上に..。純粋に、きれいだよね。

音楽に対して、誰がどうやって演奏した、とかのバックグラウンドを知った上でさらに素敵だなって思うこともあるけど、

ただ「良い」って、直感的に価値が伝わるのが音楽の好きな部分かも。

・・

勉強のために、音楽を聴くこともあるけど、

それは「音楽を楽しんでる」感覚ではない。課題図書を読んでる感覚。

チャーリーパーカー聴け!ってあるじゃん。興味深いんだけど、「実に面白い」みたいな。「いいなあ」とはならない。

ゴールがあるわけじゃないから、一歩進んでおけば、やっててよかったなって思える日がくるなあみたいな感覚でやってる。

・・

____最近はジャズを中心に、いろんなところで演奏をしているじゃない。

演奏活動を続ける中で、音楽への向き合い方/付き合い方に関して、変化したことはある?

情熱大陸みたいになってきたね。

「音楽ってひとりじゃないな」ってずっと思ってる。聞き方も接し方も全然違う。種類がいっぱいあると思っていて。

クラシック:建築物をみるみたいな感覚。

当時は「こういう形式でやりなさい」「こういう形式美」があったから、それに倣って「ふむふむ」と、鑑賞すると楽しい。

解像度をどれだけあげられるかの作業。音楽にラベルをつけていくような作業?

ジャズも勉強として聴くとなると、そんな印象になるけど。

演奏してるときは、そんな風には考えてない。

何をしたらかっこいいか、どういう音を選んだら理論的に正解でかっこいいか。

数学を解いてるような気持ちはあるよ。音楽と自分とのあいだに距離があって、それを埋めていくような。

ひとみちゃんと一緒に演奏するときは、音楽はただ世界にふわっと存在しているもの、のような印象で。

好きな曲やメロディを、「この音気持ちいい!」と純粋に楽しんでる感じ。

「こうあるべき」がない心地よさ。それは、どきどきするような気持ちよさじゃなくて。温泉に入ったときの気持ちよさと言うか...。

そういう意味で綺麗で、身近。

____「音楽」の中でも、いろんな楽しみ方をしっかり見出せているのはすごいと思う。

・・

____ステージに立つ際のスタンスの変化も気になってて。

2年前、2人でデュオライブをした時は、「好きな曲を持ち寄って、自分たちが楽しもう」という気持ちが最優先だったじゃない。

聴きに来てくれるひとへの意識を巡らせる気持ちは正直あんまりなかったけど、

今もう一回同じようにライブをしよう、ってなったら自分はそこが変わる気がしてるんだよね。観客への意識ってどれくらい巡らせてる?

たしかに、違いが出てきたかもしれない。

売れる音楽と好きな音楽って全然違うじゃん。

お金がほしいわけじゃないけど、演奏機会を増やすために人にウケる音楽をやるのもめちゃ大事だと思う。

次につながるし。可能性が増えてくる。色んな意味で損得勘定でやってる。最近はこれが多い。

けど、そうじゃないやつ。

なんでもないセッションはすごく楽しくて、素直にやりたいこと。

「自分がやりたいこと」がシフトしてきたのか?っていう話だと、

このふたつの割合が変わってきた感じはある。

現在に対しての自己評価は、「なんか違うな」って感覚もある。

なんでだろうね...。

「自分じゃなくてもよくね」となってるからかもしれない。

芸術じゃない。「自分」がないというか。

同じ腕のプレイヤーがいたら、値段が安い方が選ばれるだろうなあっていう。

そうじゃない、「やりたいこと」を昇華させてあげたいうずうずはある。

____素直にやりたい音楽っていうのは、音を素直に慈しむ時間なのかな。

そうです。

____いいねえ。音楽だけじゃなくて、自分の生活とか、アウトプットが違う中で、

やりたいこと、好きなことの根底で繋がっている意識はあったりする?

わたしは、そう言う風に好きなことの共通項を捉えてみた時、

「自分ではない存在と関わって自分のかたちを変えていく」みたいなのが多分好きなんだけども。そういうの、ある?

____「心地よさベースで生きている」のはあるかも。

目の前に選択肢があったときに、これベースで考えちゃうかもな。

未来じゃなくて現在の心地よさ。

悪く言えば「怠惰」とか「意志が弱い」と言えるかもだけど。

未来の自分に責任を持ちたくなくて。未来の自分のために、今を犠牲にしたくないというか。

今、良いと思う事、心地いいと思う事にリソースを割きたい。

10年後の自分が何を好きかはわからないから、そこを見据えるのは違うなあって思う。

ごはんを食べる時とかも、

カロリーオフなものと、ジューシーなものがあったときにジューシーなものを選ぶ。

誰かと話す時も自分をよく見せちゃう。その方が自分も相手も心地いいだろうし。

これで困ることもあるけどね...。

現在の心地よさが、秋田に残った理由でもあるかな。

東京の大企業にいくことよりも、地方の企業にいるのが今やりたいことだと思った。

音楽に関しても。等身大の、お風呂に入っているときのような直感的な気持ちよさが好き、というのもここ繋がってる。

____わたしが貯金しないのににている...。

経験に使った方が絶対いい、と思って。

やりたいこと、行きたいこと、に即使ってしまう。ちょっとでも貯められたらいいんだけどね。

ツケが回ってくるよね。それは回収せざるを得ないからするよ、

人間みんなそうなんだろうけどね...。

____めちゃ堅実な人とかすごいよねえ。

・・

____この前、曲作ったって言ってたじゃん。作曲てどうやってるの?

聴き返したらなんかちがうなーってなったからストップした。

自分がやりたかったのは、風景画...のような音楽かな?

秋田に来てから自然に感動することが本当に増えた。本当に忘れられない光景がいっぱいある。

それってどんな時だったんだろう、って思ったとき

写真だと、伝わりすぎちゃうからしんどい。

音は写実的に説明する力は持ってないと思ってるから、いい手段だなあと思っていたんだけど、

その言葉を操る能力が低かったからあきらめちゃった。やればいいんだろうけどね。

・・・

「心の琴線に触れる」って言い方するじゃん。

固有の振動数って、全てのものにあるっていうじゃん。

表現としての音楽が持つ倍音って、いっぱいあるんだろうね。人それぞれのヘルツが反応するというか。

・・・

____スウェーデンに留学した経験を通して、秋田のよさに気づいたということを

前聞かせてもらったけど。暮らす土地と自分の思考の関係性についてききたい。

自分が短期間東京にいた時、情報量に圧倒されて、

自分の持っていたはずの興味とか、「なにかやりたい」気持ちがすごく削がれた経験があって。

暮らす土地と自分の思考の関係性について自覚的になったりしたことがあった。そういう感覚って、ある?

その通りだねえ...。

一応人生の大半を東京で過ごしてきたけど、自分が東京人だというアイデンティティが本当にない。

それが、東京の歪さを表している気がしちゃって。「人間って土地を生きる存在なんだ」って秋田に来て思った。

旅してた時も思った。もちろん楽しいんだけど、疲れる。

本当に落ち着く場所...。それはどんなレベルでもいいんだけど、

居場所が必要なんだな、って思った気がする。でも居場所ってかわるじゃん。

東京はそれがすごく流動的というか。ホームじゃなくなったら本当に知らない場所になる。

友達から急に知らん人になる、感じ。すぐ他人になる。

秋田は、めちゃめちゃ仲良くなくても友達でいれる感じがある。

____アウェイ感...。

その場所が知らない顔をしている、というか...。

・・・

____他人と接しててよろこびを感じる瞬間とか、ある?

そもそもひとと付き合うのが難しい人間だと思っている。

自分がマネージできる人間関係って本当に限られてると思ってしまっている。

人と話して、いいなあと思うのは...。なんだろうね。

最近コミュニケーションが怖くなってるときがあって。

わかんないなあ。

でも、今、めっちゃ楽しい。この感情は確かなんだけど、この楽しさはなんなんだろう。

繋がりに対するよろこび?

キャパあるなしに関わらず、人と話すのは心地いいんだけど、

それって、繋がりに対する気持ちなのかな...?

…。

音楽の話してた時と比べて、この言葉の出てこなさが、色々物語ってる気がする。

そういう時期なのかもしれない。

・・・

ことばって断定的じゃん。

視覚情報 …。絵 写真 風景 人の顔...。

眼に見える解像度は高いけど、なにを考えているかは、断定的じゃない。

言葉はそこまで解像度は高くなくても、断定できてしまって怖いよねえ

・・

ひとみちゃんの言葉はやさしいと思う。

いいたいことを「こうですよね」と渡してくるんじゃなくて、ふわっと投げてくる感じがある。

言いたい内容が曖昧なわけではなくて、こちらにふわっと届く感覚がすごくあるよ。

・・・

2024.10.2

  • Lyricist

    Hitomi Onochi

  • Composer

    Hitomi Onochi

  • Producer

    Hitomi Onochi

  • Piano

    Hitomi Onochi

Keisuke Front Cover

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