

しかし 運命は非情だった
父親が倒れた
実家はかなり山を分け入ったところにあり
今後の移動 手段を考えれば
私の手助けがどうしても必要になる
このままあと数年
子どもたちの成長をすぐ側で
見届けたかった だが
その願いは叶いそうになかった
園長に事情を 説明し
卒園式の日に退職させてもらうことになった
先輩たちに伝えた
ただ 子どもたちには知らせない
卒園という彼らの輝かしい門出を
寂しさで曇らせたくは なかった
最後まで 笑顔で見守りたかった
だがその前に あの約束を
まだ果たせていない
春めいた日の午後
いつものように周囲に
意地悪をしていた 男の子を見つけ
その子の前にボールを 転がした
「ボール 返して」
呼びかけると その子は乱暴に
力任せにボールを投げ返そうとした
「ダメ ボールを手で持ってきなさい」
驚いたように けれど大人しく
ボールを手に持って近づいてきた
その子を 私は隣に座らせた
「ありがとう」
と言って そっと頭を撫でる
「なんで あんなに強く投げて返そうとしたの?」
「赤ちゃんにも、同じようにそんな強く投げるの?」
「赤ちゃんがボール遊びなんかするかよ」
口を尖らせる男の子の目を
私はじっと見つめた
「先生はね 君に相手のことを
思いやる人になってもらいたいと思っているの」
「何言ってるの」
「先生と君はね いつかさようならをする時が来る
私がいなくなった後も
こんなに怖い君のままだとしたら先生は悲しいな」
「何言ってるんだよ」
「先生がいなくなるわけないじゃん」
男の子の瞳に
小さな動揺が走ったのが分かった
「わからないよ だから先生と約束してほしい
これからは 優しい子でいるって」
男の子は少し気まずそうに けれどしっかりと
「……わかったよ」
と呟くと 照れ隠しのように
勢いよく走り去っていった
教え方には きっと
様々なアプローチがある
正解は一つではない
ただ 私はこの子には
「未来への願いを託す」
この方法を選んだ
伝わったと思う
私の言葉はきっと
心の奥に届いた
そう信じている
- 作詞者
m.ku
- 作曲者
m.ku
- プロデューサー
m.ku-3
- ギター
m.ku

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前日譚 その6 保育士たかはし 突然のお別れ
m.ku
当方作品ヒロイン中学校教員「たかはし先生」の前日譚その6です
いじめっ子と心で対話する保育士たかはし 子供の心を開くことができるか
7部作の6です。彼女の前日譚を理解する第六章です。
(7章計31分のドラマです。)
なお、四年生大学を卒業後、保育士の国家試験(学科・実技)に合格すれば保育士になることができます。取得までは一年かかります。



