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赤い土はまだ少し冷えている
トマトの根は土の奥で、
静かに息をしている。
上弦の月になると
若葉は光を吸い込み、
風の指先に触れられて
ゆらり、ゆらりと揺れる。
満月の宵。
赤く色づいた実は、
血のように張りつめ、
水の気配が皮の内側で
はちきれそうに鳴っている。
下弦のころ。
はさみの音が
ぱちり、ぱちりと響く。
いらない枝を落としながら、
月もまた細くなっていく。
旧暦の巡りのなかで、
畑は祈りの円を描く。
赤い実をひとつ、
手のひらにのせて、
「今日は甘いだろうか」とつぶやく。
空に浮かぶ月と、
地上に実る“もう一つの月”(トマト)。
ふたつは互いに照らしあい、
夜が明ければまた、
種の夢が始まる。
昔、人は火を手に入れた。 やがて鉄を知り、空を飛び、 ついには星を見上げるまでになった。 だが―― 便利になった世界で、 人の心は少し迷っている。 地球は熱を帯び、 争いはまだ終わらず、 街の灯りの中で ひとり静かに生きる者もいる。 強くなることは出来た。 だが、優しくなることは まだ途中なのかもしれない。 いま人類に問われているのは、 どこまで行けるかじゃない。 どんな世界を残すのか。