SLAM MEのジャケット写真

蟻に手と足がじゅうぶんにあり

それ以外にも2本の枝が生えているのは

歩かなければいけないからではなく

落ちゆく朝の鈍い白に

正面から射られ

盲いてしまわないよう

覆うため

それをゆっくりと引き抜くのは

誰にも似ていないことを憐れむため

背中にふいに近づく

道一本隔てた都営バスのアナウンス

かすかな男の声に

隠れた春は

(漬ける前のらっきょうの匂いがした)

自転していることを感じない

キュー という記号を

幾重にも縫い付け

川の果てを作る

満ちてなお溢れない鋭角に

指がふと恐れてしまい

空白は濡れ

不思議は不思議のままでいる

まわる必要がわからなくて

(わかってはいるけれど)

冬と夜のまま終わる場所になったら

本当にわかるようになるのか

警察病院の横にある保育園は

ピーポ保育園という名前で

通り過ぎた公園には死んだ色の芝がロープに守られ

踏みしめられるに足りる気温と足指を怠惰に待っている

7丁目のベトナム料理屋の黄色い星の端に

信号の影がすこしだけ掠めて

もう誰にも物語は必要がなかった

漢字できちんと書けないものばかりを愛してる

生理が来て

午前が終わる

いないひとをいるとする

しないことをするとする

わたし以外をわたそうと

その白線にひとがたつ

ガラス窓は音に揺れ

代わりのないものはない

代わりえないものだけを

代わるときにだけ

不存在にひらく重量を

連れて、渡る

生き残るためなら

眼鏡を諦めて

すこしの内斜視が残って

片方つぶるとまっすぐに見えることは

私に左右を教えた

せっかく覚えたのに

生き残るこの星で

左右対称の名のお前を

連れたまま

まだまわる

生き残るじゃない

この星を凍らせぬため

悔しいか?と

訊く

  • 作詞

    三木悠莉

  • 作曲

    MOKVA SOUNDS

SLAM MEのジャケット写真

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ジャパニーズポエトリーリーディング/スラムシーンを牽引する
トップフィメールスラマー三木悠莉、キャリア10年にして
10年ぶりの2nd フルアルバム。
ビートメイクには名古屋の雄primitronicsを核とし、線描、MOKVA SOUNDSを起用、東西シーンを代表し活躍する詩人、クノタカヒロ、遠藤ヒツジもfeat.参加。
日本人スラマー初のヨーロッパツアーを終え、ラテンアメリカツアーも控えた今、彼女のコトバは何を伝えるか。
これぞジャパニーズポエトリーリーディングのニューマスターピース。
スラム道、女一代、ここにあり。

アーティスト情報

  • 三木悠莉

    ポエトリーリーディング、スポークンワードのパフォーマンスを競い合う大会=ポエトリースラムにおいて、全日本大会を2連覇(2017、18)、現在最もワールドワイドに活躍するアジア、日本のポエトリーリーディング/スラムアーティスト。 日本史上最大規模となったポエトリーフェスティバル「ウエノ・ポエトリカン・ジャム5、6」、現在のポエトリースラム日本選手権大会「KOTOBA Slam Japan」」を主催、伝説的なNYのポエトリーカフェ「Nuyorican Poets Cafe」とアジアで初めて協業を成功させるなど、オーガナイザーとしてもジャパニーズシーンの第一線に立つ。 2022年からは、40ヶ国が参加するポエトリースラム世界大会機構「World Poetry Slam Organization」においてVice President For Asia (副会長:アジア担当) にも就任。 2023年春にはヨーロッパ7ヶ国にてパフォーマンスツアーを成功させ、同年秋にはラテンアメリカツアーも控える、ジャパニーズスポークンワードと世界を繋ぎ、最先端を届け続ける注目アーティスト。

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KOTOBA Slam Japan

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