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ツェッペリンの名曲「ブラック・マウンテン・サイド」の真のオリジネイター。バート・ヤンシュの指先から零れ落ちる、呪術的で官能的なギターの調べ。1966年の傑作『ジャック・オリオン』を聴かずして、ギター・ミュージックの真髄は語れません。
1966年に発表されたバート・ヤンシュの3作目『Jack Orion』(Transatlantic)は、当時のロンドン・フォークの地下水脈から生まれた転換点として語られる一枚です。前作までに自作曲で存在感を示していたヤンシュが、ここではあえて全曲を伝承歌(トラッド)で構成し、素材の古さを逆手に取りながら、ギター表現そのものを更新していきます。最大のポイントは盟友ジョン・レンボーンとの共演で、フォーク・ギターを単なる伴奏から、旋律と対位法が拮抗する二重奏の芸術へ引き上げた“フォーク・バロック”的手触りがアルバム全体に刻まれています。中でも「Blackwaterside」は、ドロップDを用いた独自の響きとフレージングが決定的で、のちにジミー・ペイジ周辺へも影響が及んだことでロック側からも再評価が進み、ギタリストのバイブルとして定着しました。また、アン・ブリッグス由来のトラッド解釈をヤンシュ流の語法へ翻訳した「The Waggoner’s Lad」や「Nottamun Town」などは、伝承曲を研究資料に留めず、現代の耳にも通じる緊張感と推進力を与えている好例です。録音はビル・リーダーが担当し、ハイファイとは別の方向で、弦の軋みや指先のニュアンスまで近距離で捉えるフラットな音像が特徴。ジャズ/クラシック/ブルースの要素が自然に混ざり合うこの時点の結晶は、のちのペンタングル的なフォーク・ジャズの萌芽としても重要で、1966年の北ロンドンの空気を音のドキュメントとして保存した作品と言えます。