歌詞

残念ながら、

絶望の朝、というものはある。

たとえば、

頭に大きな石が乗っているとか、

うみねこの大群が

頭の中を駆け巡っているとか、

瞼の上に恐竜が寝ているとか。

そういった心持ちの朝のことである。

さぼる行動力も、大人の私にはもうない。

溜め息ののち、呪文を３回唱える。

「モーニングマーガリンシュガートースト」

「モーニングマーガリンシュガートースト」

「モーニングマーガリンシュガートースト」

そうすると、

不思議とマーガリンシュガートーストが

食べたくなってきて、

からだを起こさずにはいられなくなる。

砂糖とマーガリンを惜しみなく使って、

絶望の朝に立ち向かう。

鼻歌も歌ってやる。

鏡なんかはなるべく見ない。

他人とはちっとも比べない。

大丈夫だと、

思ってやらないこともない。

平和に生きてたいな

今日もありがとね

側で笑ってくれよ　僕のために

笑って過ごしてたいな

誰だって良かった

でも　片手間の愛してるじゃ

溶かせなかった

「もうだめだ、

といったときに食べるものは、

寿司と決まっているんだよ。」とは、

昨日立ち寄った公園で

犬と散歩をしていた

おじいさんの言葉である。

わたしがもうだめそうに見えたのか、

はたまたおじいさんがそうだったのか、

連れている犬に話しかけているのか、

わたしに言った言葉なのか。

なんだかその場の全部が

曖昧模糊としていて、

わたしも曖昧に笑った。

ふと犬を見ると、

丁寧に前足を揃えて地面に伏せ、

彼もまた、

はい、ともいいえ、とも

つかないような感じで、

曖昧に鼻を鳴らした。

寿司を、食べる、

のリズムで膝を叩くと、

おじいさんも、

いっといで、

のリズムで咳払いをした。

ふと横を見やると、

犬が手を振っていた、

ような気がした。

まあ、そんなことは、

ない。

気休めの恋だって

それしかないのなら

良いじゃない　赦してくれよ

愛してるよ

背伸びした恋だって

終わりは来るから

良いじゃない　わかってくれよ

愛してるよ

気休めの愛なんて

そんなものはないから

良いじゃない　笑ってくれよ

わかってたよ

背伸びした言葉で

終わりを迎えたら

良いじゃない　わかってたよ

平和に生きてたいな

笑って過ごしてたいな

今日も私に優しくなかった人間が

SNSで優しさについて語っている。

お前が優しいなんて嘘だぞ、と

ふんぞり返る自分が

一番優しくなくて

今日も泣きたい。

人を傷つけたことがある。

思い返せばかなりある。

わたしが優しいのは

それだけ人を傷つけてきたからだ。

きっと私もあの人に、

お前が優しいなんて嘘だぞ、と

思われているに違いない。

グラタンは優しいよな、と

一口頬張ると、

口の中をやけどした。

いや、全然優しくないじゃないか。

もう何も傷つけたくなかったのに。

愚かな私だ。

今日は早く寝よう。

うみねこの大群が、

もうすぐ近くにいるみたいだ。