十月病のジャケット写真

歌詞

十月病

中村 英彦

「今日は寒いらしいよ」なんて

送信しかけて やめました

もう君には関係ないと

賢い僕が笑いました

去年の僕らは幸福で

幸福すぎて気づかなかった

長袖のポケットの底

しわくちゃの恋が残ってた

世界がうまくいかない夜は

君を呼びたくなるのです

「大丈夫」なんて無責任な

あの声だけが優しかった

ああ 君がいない!

たったそれだけ ただそれだけ

なのに十月が終わらない

秋が僕を離さない

ねえ 笑ってよ

嘘でもいい くだらなくていい

木枯らしよりも少し前

君に会いたくなるのです

夕暮れは日々せっかちで

僕をひとりにしたがります

駅まで続く帰り道

影だけやけに仲良しです

金木犀の甘い罠

反射的に振り向いた

君がいるはずなんてないのに

いる気がしたから困ります

忘れたいわけじゃないのです

忘れられないだけなのです

戻れないことくらい僕にも

わかっているから厄介です

ああ 君がいない!

風がこんなに冷たいなんて

去年の僕は幸福で

気づきもしない馬鹿でした

ねえ 会いたいよ

今さらなんて知っています

言えなかった愛の残骸が

十月の空を飛んでいる

君が好きだった缶コーヒー

ひとつ買って ふたつ買って

君の分まで買ってしまって

僕はひとりで笑いました

恋は病気じゃないのなら

どうして胸が痛むのでしょう

治る見込みもないくせに

季節ばかりが処方される

さよならなんて簡単な

五文字で終わった僕たちを

百年くらい引きずるような

そんな気がして嫌になる!

ああ 君がいない!

たったそれだけ すべてが変わる

当たり前だった毎日が

今さら光って見えるのです

ねえ 会いたいよ

格好悪くても もういいよ

あのときちゃんと言えてたら

君はまだここにいたのかな

ああ 君がいない!

だから十月が終わらない

風が吹くたび世界中が

君の名前を歌ってる

もう届かない言葉だけ

胸の劇場で繰り返す

幕が下りても僕だけが

まだ拍手を待っている

長袖のポケットに

両手を入れて歩きます

振り返っても 当然そこに

君がいるはずありません

それでも今年の十月も

君を思ってしまうのです

まったく僕は幸福な

不幸者なのでありました

  • 作詞者

    中村 英彦

  • 作曲者

    中村 英彦

  • プロデューサー

    中村 英彦

  • ボーカル

    中村 英彦

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