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現在も、和む、癒す、のような意味で巷で使われている、『チルアウト』という言葉は、1980年代後期のレイヴ・カルチャーにおいてダンスで火照った体を休ませ癒すといった行為が概念化された言葉だ。その当時から活躍したイギリスの伝説的ユニット、“”The KLF“の作品『Chill Out』の発売を切っ掛けにひろく知られる言葉となった。The KLF(ザ・ケイエルエフ Kopyright Liberation Front=著作権解放戦線の略とされるが本人達は否定。)は、1987年、イギリスのビル・ドラモンドとジミー・コーティの二人で結成されたユニットである。ABBA『Dancing Queen』を無断でサンプリング(新たに楽曲を製作する際に、過去楽曲、他者等の音源の一部を、使用する手法。)した作品を発表して訴えられかけられたり(警告を受け発売を中止、スウェーデンで在庫を焼却処分、その模様を写真に収め自作のジャケット裏面にアート・ワークとして使用したというエピソードがある。)、PV撮影の為にミステリーサークルをねつ造したりと、さんざん世間を騒がせる一方、その作品のクオリティや製作手法は後続のミュージシャン達に大きな影響を与えた。1990年に発表された作品『Chill Out』もエルヴィス・プレスリーらの楽曲が無断で使用されるなどしていたが、その他にもフィールド・レコーディングされた自然音、羊や鳥の鳴き声、機関車の汽笛や走行音などが、見事にコラージュされることによって、美しく壮大な世界を創り出し、結果この作品は、アンビエント・ミュージックの傑作(!)として音楽史上語り継がれる作品となった。しかし、この作品『Chill Out』が高い評価と大きな話題を呼んだからこそ、果たして権利関係の問題が理由なのか定かではないが、いまでは廃盤となってしまい、入手する事が困難な作品となっている。『Chill Out』が発売されて今年で20周年を迎える2010年。長年レコード・ショップのバイヤーとして膨大な音楽経験と知識を蓄え、またDJとしても活躍するDJ YOGURTと、そのパートナーであるKOYASが、果敢にこの名作の復活へと挑んだのがこの作品『Chill Out』である。一切のサンプリング音源を使用せず、コード進行やアレンジを解析し、オリジナル音源のみを使用して再構築された本作は、ブライアン・イーノが提唱したアンビエントの概念にKLFが加えたユーモアやサイケデリックな魅力をあますことなく再現し、当時のコンセプトを現代に甦らせると同時に、音楽史に残されるべき作品として新たな輝きを放っている。