

今使ってる皿は一つ端が欠け
立ちのぼる湯気だけが食卓をなぞる
指でそっと触れば傷は乾き
触れられぬ温度だけがそこにいる
欠ける
ここにある
欠けてなお
ここにしかない
廊下の明かりは消し忘れの跡のように
紙袋の皺が小さく鳴る
名前のない音が靴の裏でちょうど潰れ
玄関の隙間に風だけが残る
欠ける
ここにある
欠けてなお
ここでしか鳴らない
洗ったコップの底で消えぬ輪が揺れ
逆さまの景色が薄く呼吸を繰り返す
名前を呼ばぬまま棚に戻せば
静まりが透明の重さに変わる
夜更け電気を消すたび壁が寄る
溶けた秒だけがすこし遅れ
凍えた窓の曇りを手のひらで拭えば
指紋だけが光を掴んで離さない
欠ける
みえすぎる
欠けてなお
うめないでくれ
欠ける
ここにある
欠けてなお
ここで息をする
薄い皿端の光端に座る影
重ねた日重ならぬ身
水の輪輪輪
指の皺染みに印消さず埋めず
空ではない失くしたのではない
ここに空き
空気の芯鎮まりの芯欠けてなお芯
呼べぬ名夜の名灯の下音の底
軽い袋重い間息は浅く色は深く
青はまだ印のまま足は出ず
胸はある
街灯の下で影が二つ分ずれ
肩にかかった夜がゆっくり沈む
寒さは痛まずただ正確で
肌の上に「居ない」という字だけが残る
欠ける
戻らない
なおある
返せない
誰も悪くはないと何度も唱え
それでも空いた椅子の足がかるく鳴り
湯のみの口にはヒビは走らず
かわりに胸の表がおだやかに鳴った
名は呼ばない
埋めない
確かめない
皿は欠けたまま置く
湯はぬるむ
それでいい
もしも埋めてしまえば形は整う
けれど整った形に君の線はない
「ここは空」
どうではなく君のありかで
ほかのなにでもピタリとは合わない
欠ける
消さないでくれ
欠けてなお
消えないでくれ
朝が来るたび窓辺の植木がすこし伸び
白い根は土の下で道をつくる
誰にも見えぬままたしかに進み
光のまえで影だけを増やした
欠ける
ここにある
欠けてなお
ここにしかない
はっきり言うこれは喪失ではない
ここに君の形のまま空きが残っているという事実だ
触ればいたみみれば鎮まる
痛みが消えたら君も消えてしまうから
欠ける
ここにある
欠けてなお
ここで
息をする
欠ける
ここにしかない
欠けてなお
ここで
息をする
- 作詞者
Galactic (Fire) kids
- 作曲者
Galactic (Fire) kids
- プロデューサー
Galactic (Fire) kids
- ボーカル
Galactic (Fire) kids

Galactic (Fire) kids の“欠ける”を
音楽配信サービスで聴く
ストリーミング / ダウンロード
- ⚫︎
欠ける
Galactic (Fire) kids
アーティスト情報
Galactic (Fire) kids
Based in Okinawa/Japan 都市の夜気や心の揺らぎを「日常に潜む現象」として映し出し、 「純粋な心で内にある熱を見つけ、それを宇宙のように広げたい」という思いを込めている。
Galactic (Fire) kidsの他のリリース



