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歌詞

長すぎる晴れ

Anti-Trench

天使はいつも人間を見殺しにする

そしてくるくる回る あめ玉をさがすように

またひとり 隕石になって

穴をあけた 空の白い日 風のはしゃぐ日です

車両からつぎの車両へ

自分のより小さな 足あとがつづくのを見ると

もっと先へ もっと先へと思うのです

走る窓から手を突きだして

檸檬を ひとつ ふたつ 放ったけれど

どれも天使にふれることはなく

地面に吸いこまれて 僕は

もっと先へ もっと先へと思うのです

生きさせないで ありのままを

生活のささやきを

すでにある答えを生きさせないで

おとなたちありがとう 寄ってたかって僕を人間にしようとしてくれて

パパとママは遠吠えのかわりに祈りかたを与え

先生はみにくい僕の顔に仮面をかぶせた

仮面はきゅうくつだったが ときに鎧にもなった

最後に好きな人がやってきて かさばる僕の翼にさわり

持ちはこびやすい大きさにたたんだ これまでのだれにも

熱くてさわれなかった燃える翼を

ありがとう それでも人間になりきらない僕を

みんなでこわごわかわいがって きれいな箱に住ませてくれて

もっと先へ もっと先へと思うのです

天使はいつも人間に呪いをかける

うつくしい真実があるようにみせかける

走る窓から

もっとすごい速さで

去っていくあなたを見ようとして

目をこらしたけれど

草むらが 今年のつやめきを

粛々としているだけだったのです

到底思えないのです あなたが僕らと同じ姿をしているとは

それとも僕らのほうであなたを真似たんだというなら

教えてください どこを真似しきれなかったのか

角がたりませんか 牙がたりませんか やさしさが

足りませんか 神さま

神さまは僕を神さまにしたかったんでしょう

おとなたちが人間でありながら

僕を同じ人間にしようとしたように

神さま 僕人間にしかなれなかった

画家がひとり話しはじめる

おれは今日人間を描かなかった

子どもと遊ぶ時間のほうが大切だった

もうひとりの画家がいう

おれは今日人間を描いた

子どもが出ていくのを放っておいた

ふたりは見つめあったまま

もうなにも言わなかった すごく長い時間

轢かれてつぶれた絵本が

くりかえし轢かれなおすのを

天使たちが 枝に座ってながめています

薬局の外の花壇に女の人が座って濡れています

もっと先へ もっと先へと思うのです

生きさせないで ありのままを

生活のささやきを

すでにある答えを

わたくしというあきらめを生きさせないで

  • 作詞

    Kujira Sakisaka

  • 作曲

    Yuya Kumagai

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アーティスト情報

  • Anti-Trench

    Anti-Trench 詩人・向坂くじらとGt.クマガイユウヤによる朗読ユニット。2020年1stAlbum「ponto」「ŝipo」リリース。 向坂くじら 詩人。第一詩集『とても小さな理解のための』(しろねこ社)。朝日新聞、共同通信社配信の各地方紙、他雑誌などに寄稿。教育の分野でも活動し、各所で詩の出張授業を実施するほか、2022年埼⽟県桶川市にて「国語教室ことぱ舎」を自ら創設する。 クマガイユウヤ ギタリスト、コンポーザー。 セッションミュージシャンとして幅広くジャンルレスに活動するだけでなく、ソロプロジェクト・THE NAAVなど、各所で精力的に活動中。BMSG所属アーティスト・Novel Coreのバンドメンバー。

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