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春が嫌いだ。
皆が揚々と張り切っていて
自身が自堕落なのだと突きつけられているような気がした。
僕は今日も部屋に篭って音楽を作っている。
風に吹かれ、桜の花びらが窓ガラスに張り付く。
外は生憎にも天気であった。
創作に行き詰まったから、薄手のカーディガンを羽織り散歩に出かけた。
道路脇には散った桜の花弁。
車や人々に踏まれ、潰れ、透明になっているものや茶色くなってしまっている花弁が隅に追いやられていた。
まるで自分の成れの果てを見ているようだった。
頭上にはまだ散らぬ、まだ散らぬ。
と燦々と咲く桜がこちらを見下ろしていた。
数歩進んだ先の自動販売機の前で、平たい財布から小銭をつまみあげ暖かい珈琲を買った。
両の手でそれを握って暖を取り、肩をすくめながら足を進め、近くの古びたベンチに腰をかけた。
僕は胸ポケットから残り二、三本になった煙草を取り出し、一服しようと口に咥え、火をつけた。
煙が上っていくのを目で追うと
流れる雲と水縹色の空が広がっていた。
それは綺麗としかいいようのない春空だった。