波羅葦増雲のジャケット写真

歌詞

世界を救うような局面に立たされることがある

ハハノシキュウ, 油揚げ

俺の話は聞かなくていい

なんの力も持たない一個人でしかない自分が、世界を救うような局面に立たされることがある

そんな風に思い込んでる大人の話なんて聞くに値しないからだ

全く根拠なんてないが、物心ついた子どもの頃から何かの暗示ように脳裏に貼り付いている

それはこのタクシーの剥がせない広告のようにどれだけ速度を上げようとついて回るものだ

今日も俺はそんな独白をボソボソと執筆しながらドライブレコーダーにしか残らない孤独を誰にも届かないように捨てている

ゴミ箱の中に丸めた万札と鼻のかんだティッシュを同時に投げて、その事実が世界と剥離していくような自意識が、いつかどこかで世界と繋がるんじゃないかと思い込んでいると言える

俺としては本意ではないが、今時の中高生は敢えて世界と触れていない部分を大事にしないといけないという動きが進んでいるらしい

それが自分の学生時代と意図せず繋がってしまいそうな怖さがある

怖さという表現が正しいのかどうかはわからない

俺がこんな風にドライブレコーダーにだけ誰とも共有したくないものを残し続けているのは、一方でそれがほんの小さな弾みによって誰かに共有されてしまうかもしれないからだ

例えば、この数秒後に酔っ払いが乗ってきて、俺を殴ったり車内の設備を壊したりしたら、証拠として映像を提出する時に誰かの目に触れてしまう

そういう可能性が怖さだ

だけど逆に言えばその可能性がゼロだったら、俺のこの世界から剥離していく作業は俺に何も与えてくれないだろう

ゼロじゃないからその気になれば触れそうだと思い込めるのだ

そして、何よりそういう秘密の抜け穴みたいなものを排除してしまえば、いつか来るかもしれない世界を救う場面に出会せない気がするのだ

全てのツッコミどころを完璧に消し去った誰も文句をつけられないものでは、世界を救えない

俺はそんな風に思う

大人になっても変わらずにそう感じている

そして、この直感には根拠も証拠もない

そんな不完全さが逆に俺を救っている

だから、前に乗せた女子高生が語ってくれた波羅葦増雲だって彼女自身を救っていると言える

彼女は馬鹿にされるとか笑われるとかそんな風に言っていたが、恥ずかしいことじゃないと断言できる

そうは言っても世界の全てが彼女を馬鹿にしないとは言えない

全てのツッコミどころを完璧に消し去った誰も文句を言えないものじゃないと世界と繋がれないと彼女は言っていた

完璧な波羅葦増雲は波羅葦増雲とは呼べない

それでも完璧を目指そうとするから、いつかそれが世界と繋がった時、誰かを救うのかもしれない

  • 作詞

    ハハノシキュウ

  • 作曲

    油揚げ

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波羅葦増雲

ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 1

    苦渋と辛酸がディープキスをしてる

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 2

    誰にも言えない秘密を作りなさい

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 3

    小学三年生から目線の高さが変わっていない

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 4

    頭の中の小説をそのまま海に流すように

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 5

    内側とも外側とも言えない部分

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 6

    要点を挙げるとすれば

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 7

    見えないため息と見えるため息

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • ⚫︎

    世界を救うような局面に立たされることがある

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 9

    運命の人

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 10

    沈黙の美しさについて

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 11

    こんなこともあろうかと

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 12

    波羅葦増雲

    ハハノシキュウ, 油揚げ

小説家としてもデビューしている異色のラッパーハハノシキュウと唯一無二のスタイルのビートボクサー油揚げによるアルバム。ビートボクサーとラッパーがコンビを組んでバトルをする破天共鳴によって生まれたユニット。アルバムを通して紡がれる世界観はラップとビートボックスというカテゴリーに含み切れない尖ったものとなった。ディープな世界に潜ってみてください。

アーティスト情報

  • ハハノシキュウ

    ・ハハノシキュウ ・無所属 ラッパー/小説家 ・青森県弘前市出身のラッパー/小説家。ラッパーよりも先に小説家を志していたが、新人賞の応募規定が面倒になり心が折れ、ラップを始める。MC BATTLEに出たことで本格的に活動を開始、なぜか一度だけポニーキャニオンからメジャーデビューを経験する。結果的にラッパーとして活動していたことが身を結び、2019年に小説家としてデビューする。

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  • 油揚げ

    ・油揚げ ・無所属 Human Beatboxer ・実験音楽にインスピレーションを受け、独自のテクニックやグルーヴ感を軸にしたBeatboxerとしては唯一無二のスタイルを確立している。 ライブパフォーマンスは基本即興で行われ、空間と調和しながらその場限りの音を奏でる。 ライブ、楽曲制作、バトル、イベント主催など幅広く活動中。

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