波羅葦増雲のジャケット写真

歌詞

こんなこともあろうかと

ハハノシキュウ, 油揚げ

これが誰の話であるべきなのか

毎日考えることに意味がある

大人って言葉で

声に出して音が鳴って

こっちが知っててわざと無視してるようなことだって

性善説のように大仰(おおぎょう)に説く大人の物真似

を見せることでこの観点を測ってわかってる振りをする

自分が大人になってみて

教師目線、だとその感覚はもどかしく

兜の緒を締めて、大人らしく大人しく

どうせみんなわかってるけど、敢えて目を逸らしてんだろってことを、仕方なく言語化すると面倒さの連続した透明を不透明にしていく

生徒らは自分で言語化できないだけで

言葉になる前の元素とか粒子の意味を、なんか不敵に感覚的に理解してる

大人がそれを言語化してやることで解像度が上がるわけだけど

それによって失われるものもたくさんある

他人と共有しないものを作れと指導する度に、共有なんてチャチな言葉に成り下がる前のモヤモヤの美しさを殺してるような気分になる

そんなモヤモヤの死体を埋めるために練習を繰り返しているのかもしれない

美術室の鍵を閉めるため部員を帰らせる

仕事があるとすればそれくらいだと思っていた

そろそろ閉めるから帰れよと

部室の扉を開く

残っていた部員は二人

いや、正確には一人か

「あっ、先生」

部室に残っていたのは男子生徒一人だった

いつもブツブツ独り言を言ったりしてて

学校的には手のかかる側の人間として扱われているやつだ

どうしたんだ?

やつは答える

「彼女を殺してしまいました」

人形みたいに固まったままの女生徒

デッサンモデルの延長

男子生徒は感情に置き場に困ったような態度でブツブツと何かを言っている

「僕は小学三年生から目線の高さが変わっていない……」

「落ち着け。そして、手伝え」

「え?」

「死体を埋めに行くぞ」

「でも、僕は」

やつの下半身に目線を向ける

「本当は車椅子なんかなくても歩けるんだろ」

それがこいつの波羅葦増雲なんだ

他人の波羅葦増雲に触れたのは初めてかもしれない

「お前が車椅子で目線が低いのはみんな知ってる。だから、死体を埋めても犯人だと思われないんじゃないか。推理小説的にはフェアじゃないけど、よくある話だ」

そう、フェアじゃない

向こうの波羅葦増雲を知ったんだ

こっちの波羅葦増雲も教えてやるか

「先生、なんでそんなに死体の処理に慣れてるんですか?」

「死体を埋める練習ばっかしてたからな。誰とも共有しないで」

「美術室のマネキンを盗んでたのって先生なんですか? なんでわざわざそんなことをするんです」

「こんなこともあろうかと思ってさ」

  • 作詞

    ハハノシキュウ

  • 作曲

    油揚げ

波羅葦増雲のジャケット写真

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波羅葦増雲

ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 1

    苦渋と辛酸がディープキスをしてる

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 2

    誰にも言えない秘密を作りなさい

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 3

    小学三年生から目線の高さが変わっていない

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 4

    頭の中の小説をそのまま海に流すように

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 5

    内側とも外側とも言えない部分

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 6

    要点を挙げるとすれば

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 7

    見えないため息と見えるため息

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 8

    世界を救うような局面に立たされることがある

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 9

    運命の人

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 10

    沈黙の美しさについて

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • ⚫︎

    こんなこともあろうかと

    ハハノシキュウ, 油揚げ

  • 12

    波羅葦増雲

    ハハノシキュウ, 油揚げ

小説家としてもデビューしている異色のラッパーハハノシキュウと唯一無二のスタイルのビートボクサー油揚げによるアルバム。ビートボクサーとラッパーがコンビを組んでバトルをする破天共鳴によって生まれたユニット。アルバムを通して紡がれる世界観はラップとビートボックスというカテゴリーに含み切れない尖ったものとなった。ディープな世界に潜ってみてください。

アーティスト情報

  • ハハノシキュウ

    ・ハハノシキュウ ・無所属 ラッパー/小説家 ・青森県弘前市出身のラッパー/小説家。ラッパーよりも先に小説家を志していたが、新人賞の応募規定が面倒になり心が折れ、ラップを始める。MC BATTLEに出たことで本格的に活動を開始、なぜか一度だけポニーキャニオンからメジャーデビューを経験する。結果的にラッパーとして活動していたことが身を結び、2019年に小説家としてデビューする。

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  • 油揚げ

    ・油揚げ ・無所属 Human Beatboxer ・実験音楽にインスピレーションを受け、独自のテクニックやグルーヴ感を軸にしたBeatboxerとしては唯一無二のスタイルを確立している。 ライブパフォーマンスは基本即興で行われ、空間と調和しながらその場限りの音を奏でる。 ライブ、楽曲制作、バトル、イベント主催など幅広く活動中。

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